アレキサンダーディシプリン第3巻_NoLink
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リップバンパーの調整図3-1 装着準備のために完成した急速拡大装置.6か月以上口の中に入れておいても衛生上の問題は生じない.患者の年齢に応じて,3種類のデザインのものを使用している.1. 永久歯列:第一小臼歯と大臼歯にバンドを装着したもの2. 混合歯列:大臼歯だけにバンドを装着したもの3. 乳歯歯列:アクリル製の咬合面カバーをボンディングしたもの上顎骨急速拡大装置の設計については,本シリーズ第1巻の第8章を参照してほしい.リップバンパーNevantら5による研究では,患者の協力が良好であれば,リップバンパー治療は3つの領域でアーチスペースを確保できるとされている.1. 下顎切歯がほぼ3°唇側に傾斜し,1.5mmのスペースが得られる. 2. 下顎第一大臼歯は遠心に傾き,両側に1.5mmのスペースができる.3. 臼歯は左右で約2mmずつ頬側に移動する.このような動きを組み合わせることで,下顎歯列弓のスペースを6~8mm増加させることができる.また,この研究では,アクリルパッド付きのリップバンパーは,チューブのみの場合よりもはるかに効果的であることが示された.上顎骨急速拡大装置のスクリューをシールする際に,下顎第一大臼歯の周囲にスペーサーを装着し,2週間後にこれらの歯に特殊なリップバンパーチューブ付きバンドとリップバンパーを装着する(図3-2).患者はリップバンパーを24時間装着し,食事や歯磨きの時だけ外すように指示される.図3-2 リップバンパーを下顎歯列に装着した状態.4週間に一度,リップバンパーを4方向調整する.1. リップバンパーの両サイドの端は,頬舌側的に抵抗なくチューブに収まるように調整される.2. チューブから3~4mm側方的に拡大するよう調整を行う. 3. 唇舌側的には,前歯部のアクリルパッドが下顎切歯の唇側3mmに位置するように調整する.4. 最後に切端歯頸側の調整を行う.リップバンパーは,アクリルレジンパッドが下顎前歯の歯肉線の位置かそれより下になるようにする.Nevantら5は,パッドをどこに設置しても切歯は同じような反応を示すことを示した.患者の協力は,4週間後の予約時に装置を外したときに,装置がどれだけ抵抗がないかを確認することで簡単に判断できる.患者の協力が良好であれば,リップバンパーは側方的な拡大力がなくなり,調整が必要となる.通常,前方パッド部分は,下顎前歯にほとんど接触するぐらいのところまで動いてくる.患者の協力が不十分な場合,元の調整がまだ“有効”であるため,装置の再調整はほとんど必要ない.症例によっては,下顎歯列にバンドやボンディングを装着した後でもリップバンパーを装着することができる.このような症例は,治療開始時のアーチレングスディスクレパンシーがかなり大きいのだが,リップバンパー治療によって新たなスペースを作り出せるはずである.リップバンパーは下顎前歯をわずかに唇側へ移動させるが,この前歯の傾斜移動は最初のアーチワイヤーでスペースを閉鎖することにより,減少させることができる.このためには,0.016 SSのアーチワイヤーを臼歯から臼歯までパワーチェーンで連結しスペースを閉鎖し,リップバンパー側方拡大に使用する装置47

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