p図10p〜r 完成時,咬合状態や発音障害,および下顎義歯の吸着すべてにおいて改善している.s図10s〜u 顔貌写真.前歯の被蓋関係,臼歯の1歯対2歯の関係が再現できている.閉口時(s),light smile(t),smile(u).口元と調和した前歯の位置になっていることが確認できる.第一大臼歯の関係がClassⅠのみならずClassⅡおよびⅢという関係となることがある.なお,上顎臼歯歯列は犬歯から翼突下顎縫線に連続性をもって,下顎臼歯歯列は犬歯近心隅角からレトロモラーパッドの舌側面を結ぶパウンドラインを1つの基準として歯列を再現する(図11). 生理学的には,発音を利用したり,機能時の舌や頬粘膜の動きと歯の排列位置や研磨面形態の調和を確認する必要がある.上顎においては,口蓋側研磨面形態ならびに人工歯排列位置の確認に,パラトグラムを応用する方法が考えられる.臨床的には,wax denture試適時に行ったり,あるいは治療用義歯,完成義歯を使用しながらチェックしていく.しかし,上顎では検査で使用する材料の選択が難しい.もともと発音時に機能する舌の口蓋へ押し付ける圧力はあまり強くないうえに持続性がない.そのため,材質の硬さは柔らかく可能な限りフローの良いものがよいが,口蓋側につけると誤嚥を招いたり,下顎に99骨格性不正咬合:無歯顎補綴に必要な診断と治療手順qrut2)ポステリアポジションの勘所 臼歯部は,舌と頬によって決められたデンチャースペースに位置づけられる.したがって,咬合床やコピーデンチャーを用いた咬座印象とそのクオリティが重要になる.無歯顎補綴では臼歯のサイズ,位置は自由に設定できるため,人工歯のポジションとしては,骨格のなかでもっとも応力が集中する部位に第一大臼歯を優先して排列する.臼歯の大きさは前歯部の歯の位置が決定された後であれば,模型や画像データ上で得られた情報をもとに,上顎犬歯遠心からZAC-lineまでの距離を計測し,小臼歯人工歯サイズの近遠心径を合わせれば,顎骨に調和した人工歯を選択することができる. 第一大臼歯の近遠心的な位置関係は,上顎ではZAC-line(矯正学的にはKey ridge),および下顎ではPassamonti notchを参考にする.これら上下顎解剖学的特徴の近遠心的位置は顎骨の発育状態に左右されるため,骨格性不正咬合をもつ患者では,上下顎
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