無歯顎補綴の治療戦略_NoLink
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c図10c,d まずコピーデンチャーを製作し,これに対してピックアップ印象を行い,床縁形態の不足している部分や咬合平面のズレを可能な限り修正し,粘膜調整を併用しながら機能回復を試みる. 本来適切な下顎位を設定し,厳密な顎間関係記録と同時に印象採得を行うためには,デンチャースペースにぴったりと適合した装置を用いて記録することが理想的である.筆者らの日常臨床においては,コピーデンチャーを用いた口腔周囲諸筋のリハビリテーションを行ったのち,適切なデンチャースペースの獲得と同時に最適な下顎位を模索することがある.コピーデンチャーは旧義歯をもとに製作されることが多く,何らかの改造や修正をともなうことがほとんどで,技工操作は煩雑になることもある.しかしその利点は大きく,治療用義歯として使用することで,筋や関節の不調和を解消した状態の下顎位で,床研磨面も含めた印象採得を行うことができる.この場合は,ティッシュコンディショナーではなく,コピーデンチャーを積極的に活用しようシリコーン系印象材を用いて,粘膜面の印象と同時に咬座印象の要領で行うことが多いが,上下顎を同時に採得するわけではなく,片顎ずつ確実に行うようにしている(図10). なお,あまりに現義歯の状態が悪く,より大きな改変が求められる場合には,コピーデンチャーではなく現義歯の情報を加味したコピー咬合床(図11)を製作することもある.コピー咬合床は,歯列弓や咬合平面などを大きく変化させたい場合に,コピーデンチャーよりも簡便で短時間に作業を行うことができるため大変使いやすいものである.しかし,従来の咬合床のようにワックスによる平面どうしの接触となるため,顎位のズレが生じやすく,必ず再度確認の工程を挟む必要がある.56CHAPTER 4d図10a図10b図10a,b 80代,女性.部分床義歯から総義歯に変わったとたん,義歯が動いて何も食べられなくなったという.これまで何度も総義歯を作り替えているが,どれも動いて使えないとのことであった.下顎の正中は大きく右側に偏位している.5.コピーデンチャーの活用とその有用性

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