ペリオインプラント再生治療2022_Nolink
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1はじめに2術式の変遷 歯周外科治療は歯周組織の異常改善のために行われる外科手術の総称であり、切除療法、組織付着療法、歯周組織再生療法、歯周形成手術に大別される。明視下で歯石を除去するための歯周外科治療の歴史は古く、中世ルネッサンス期より臨床応用されてきた1が、さまざまな術式が考案された20世紀中頃より飛躍的に発展し、歯周ポケットの除去を主な目的とした切除療法から、歯根面および歯周ポケット内部に蓄積した細菌や細菌由来の汚染物質を取り除き、歯肉軟組織が歯根面へ付着することを促す組織付着療法へと術式は変遷してきた。それをさらに発展させた術式が歯周組織再生療法である。 歯周組織は歯肉、歯根膜、歯槽骨およびセメント質から構成される組織である。歯周組織再生療法は歯肉以外の歯周組織の再生を目的とした歯周外科手術であり、その考え方は1976年Melcherの仮説2に端を発する。すなわち、「歯周外科治療後の歯根面に、最初に付着・増殖してくる細胞がその後の治癒形態を決める。上皮細胞、結合組織由来細胞、骨由来細胞および歯根膜由来細胞のうち、歯根膜由来細胞が歯根表面に到達・増殖した場合にのみ歯周組織再生は起こる」というものである。その仮説に基づき1982年、Nymanら3はミリポアフィルターを用いたGTR法の最初の臨床例を報告した。その後医科領域で応用され始めた延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が歯科領域でも用いられるようになり、すぐにGTR法におけるメンブレンの主流となった。しかしながらGTR法は、メンブレン露出の可能性が高いためテクニックセンシティブであった。特にThinフェノタイプの多い日本人を含むアジア人4はメンブレン露出のリスクがさらに高い5ため、より成功が困難である。メンブレンが露出すると、歯周組織の再生量が減少する6。メンブレンの露出は、それまで通常の歯肉溝内切開をつないだ切開で行われていたことも大きく影響したため、それを改善する目的で、すなわちメンブレンを確実に被覆するための切開方法として考案されたのが、歯間乳頭温存術である(元々は移植骨被覆を目的としていた)。 テクニックセンシティブであるがゆえに広くは普及しなかったGTR法に代わり、1997年Heijlにより最初の臨床例が報告され7、2000年YuknaとMellonigによってその臨床的ならびに組織学的有効性が証明された8ことで、世界的に広く応用されるようになったのがエムドゲインを用いた歯周組織再生療法である。本法においても成功の鍵は血餅の保持であり、そのため歯間乳頭温存術はなくてはならない切開・縫合法として用いられるとともに、さらなる発展をしてきた。 最初に報告された歯間乳頭温存術は、歯間部骨欠損部への骨移植を想定して1956年にKromerによって考案された方法とされている9。1973年にはApp GRによって新たな手法:Intact Papilla Flapが紹介され10、1984年のGenonとBenderによる手法11、1985年のEvianらによる手法:Retained Interdental Papilla Procedure12を経て、1985年Takei HHらによって汎用性の高い歯間乳頭温存術であるPapilla Preservation Technique(PPT)が報告さ16岩野義弘岩野歯科クリニック (東京都) 院長巻頭論文歯周組織再生療法における 術式の変遷と適応症

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