その下顎位をどう決める?
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Nba図4-10a、b ANBは8°で骨格的Ⅱ級であった。McNamara lineと比較すると下顎後退位であることが疑われた。平均値と比べて、mandibular planeはフランクフルト平面(FH平面)に対してわずかに鈍角となっており、facial depthはわずかに鋭角となっていた。Riketts分析では、顔貌の傾向は、Mesio with Dolico tendencyであった。140図4-11 Lower facial height(LFH)は平均的であり、Mesioの傾向を示した。しかし、gonial angleは120°とBrachyo傾向(Mesio with Brachyo tendency)であったため、本来のこの患者の個性に対して、LFHはわずかに開大している可能性が読み取れた。「臼歯群が咬耗しているにもかかわらずLFHが開大している」という現象が生じてしまうため、LFHを開大させないような咬合挙上が必要である。この現象に関しては後述する。図4-13 Gonial angle 120°から算出される理想咬合平面角は8~9°である(gonial angle100°~148°の範囲で124°を中心とし、FH to OP5°~15°の範囲で10°を中心として計算。本症例はgonial angle124°に対して120°とわずかに鋭角なため、咬合平面角は10°よりもわずかに鋭角が理想と考える)。下顎の咬合平面はFHに対して9°である。下顎平面は理想平面に対してほぼ平行であり、これだけでは下顎位の後方回転を疑うことはできない。しかし、臼歯の咬合面の低い歯冠高径を回復したとすれば下顎咬合平面は理想平面よりも急峻となることが想像され、下顎位の後方回転が疑われる。Gonial Angle 120°(124°)FH to L OP 9°FH to Ideal OP 8-9°Gonial Angle 120°(124°)LFH 49°(49°)図4-12 上顎の咬合平面はFH平面に対して14°、さらにカンペル平面よりもわずかに急峻であった。ただし、本症例はgonial angleは120°とBrachyo 傾向(Mesio with Brachyo tendency)であり、カンペル平面よりもわずかに平坦であるほうが望ましい。これは下顎位が後退しやすい上顎の咬合平面を示す。図4-14 そこで、下顎基準の咬合平面角(バルクウィル角)を算出すると、25°と日本人平均値の23°より鈍角化していた(鈍角になるほど後ろ下がりとなる)。さらに、下顎頭がすり減って短くなっていることも考慮すると、実際はさらに鈍角化していることが予想された。これは下顎臼歯群のtooth wear が原因の咬耗によって生じていると考えられる。つまり、下顎位の時計回りの後方回転と、下顎臼歯群の形態が後ろ下がりな平面になっていることとがあいまって、理想平面角が偶然にも一致しているだけだと判断した。FH to U OP 14°(11°)Facial depth 85°(88°)Mandibular plane 30°(27°)Gonial Angle 120°(124°)Gonial Angle 120°(124°)カンペル平面バルクウィル角 25°(23°)

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