これからのデジタル歯科がわかる本
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1本発表の背景2デジタル技工特有の現象「エッジロス」協和デンタル・ラボラトリー (千葉県) 歯科技工士 歯科技工所における歯冠修復技工物作製の現場では、近年、デジタルデータをもとに設計を行うフローが定着している。例を挙げると、ジルコニアを修復マテリアルとして選択する場合や、インプラントブリッジのチタンフレームを加工する場合には、石膏模型をデータ化した作業フローが必要不可欠である。また、手作業でもデジタル加工でもどちらでも行える工程が多数存在する。たとえば、歯冠デザインデータをワックスディスクでミリング加工すれば手作業によるワックスアップ後の状態と同等に、PMMAディスクでミリング加工すれば歯冠色レジン填入後の状態に、二ケイ酸リチウムブロックをミリング加工すれば埋没・プレス作業を行った状態を達成できる。また、3Dプリンターを活用し、鋳造パターン、義歯床、各個トレー、スプリントなど、さまざまな造形が可能である。このように技工手法の選択肢は多岐にわたり、歯科技工所各社ではそれぞれ、自社の強みを活かした手法で作業が進んでいるものと思われる。 さらに、従来は石膏模型を技工用卓上スキャナーでデータ化するフローが一般的であったが、現在ではチェアサイドにおける口腔内スキャナー(以下、IOS)の普及拡大が進んでいるように感じられる。当歯科技工所の場合、2017年にIOSデータを初受注して以来、右肩上がりで受注症例件数が伸びており、2022年11月現在では累計12,000件弱、全受注の26%がIOS症例となっている。受注件数の増加率を年度ごとに見ると、2017〜2018年に3倍の増加率を示したのち、以降4年連続で1.4倍前後の増加率で推移している。この傾向は今後もしばらく継続していくものと予想している。 IOSデータの受注方法は従来の印象体、模型等の受けわたしのような物理的な方法とは異なる。クリニックから各IOSメーカーのクラウド経由で、歯科技工所へ口腔内スキャンデータをダウンロードすることができ、システムによりCADソフト直結でデータを受けることもできる。歯冠修復物は、少数歯症例であればモデルレスでの作製が可能であり、作業上必要があれば、3Dプリンターで模型を造形する。ここに石膏模型のない新しいワークフローが生まれている。 本稿ではデジタル技工特有の現象である「エッジロス」について述べたい。「エッジロス」とは、卓上スキャナーやIOSによる「光」を使用した三次元計測特有の現象である。「光」を使用した計測では誤差が避けられない。スキャナー内部では対象物をスキャンする際、同一測定ポイントに対して複数回の測定を行いデータの平均化や間引きを経てスキャン対象面を再現している。この平均化や間引きの結果、被測定物のエッジ、つまり支台歯のフィニッシュラインをはじめとする鋭縁が実物に比べて丸まって再現される「エッジロス」という現象を引き起こし、歯冠修復物の適合精度に影響を及ぼすことが知られている。 オールセラミックスの支台歯は角張った部分のない形成が推奨されているが、技工的な観点からみるとそれは30巻頭症例木村健二デジタル技工のタイトル25字程度落とし穴

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