3術式選択のポイント1検査・診断2治療計画浅賀歯科医院 (埼玉県) 院長歯学博士 初診は2019年6月。「前歯にニキビがある」という主訴で来院した。口腔内を確認すると1根尖相当部にサイナストラクトを確認した。デジタルX線写真、CBCTにて1の水平性の歯根破折を確認した。歯科的既往歴として、この歯は子供の頃にぶつけて神経を抜いたとのことであった。 病因論を考察すると、下顎前歯部に叢生があり、1は下顎のアーチから外れ唇側に出ていた。そのため日常的に突き上げが起きていた可能性があり、今回の水平性の歯根破折に至ったと考えられた。 口腔内の問題点として、以下の3点が挙げられた。 ①1の水平性歯根破折 ②下顎前歯部の叢生 ③88の残存 1は根尖付近で破折しており保存不可能と診断し、両隣在歯が治療経歴のない生活歯であることから、理想的な治療計画として88の抜歯→矯正治療→1インプラント治療を提案した。しかし、患者の希望により1インプラント治療のみとなった。インプラント治療計画 インプラント治療を行ううえで、機能性、清掃性、審美性が重要とされている。前歯部つまり審美領域では審美的な結果を得ることがより重要となる。 審美領域のインプラント治療を計画するうえでインプラントの埋入時期は、最終的な結果に大きく影響する。インプラントの埋入時期を選択するにあたって重要なことが2つある1)。1つは唇側骨の存在である。唇側骨の厚みは平均で0.2~0.4mmと言われており、抜歯後に唇側骨は吸収する2、3)。インプラント埋入予定部位の唇側骨が十分にある場合は、抜歯即時インプラント埋入(Type1)が第一選択となる4)。2つ目は、インプラント埋入予定部位の隣在歯の骨レベルである。通常、抜歯後には両隣在歯の骨レベルを結んだラインまでの骨再生が期待できる。 今回の症例は、隣在歯の骨レベルは高い位置にあるが、唇側骨は存在しなかったためEdgarらの分類のGRADEⅢとなり、術式は抜歯と同時にGBRを行い、その後、抜歯待時インプラント埋入(Type4)をすることにした4)。前歯部審美診断 インプラントの外科的術式が決定をしたら、前歯部軟組織の診断を行う。1のインプラント埋入予定部位のスキャロップラインを反対側同名歯と比較するとやや高い位置にあり、結合組織移植による軟組織の造成が必要である。また、2と2を比較すると叢生もあるためにスキャロップラインは左右差が大きく、1の抜歯、26タイトル25字程度巻頭症例浅賀勝寛進化したデジタル審美治療
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