SPECIAL FEATUREウィズコロナ時代の歯科・口腔外科医療特 集エアロゾル,飛沫とは エアロゾルとは気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子で,飛沫とは水分を含んだいわゆる「しぶき」である(図1).新型コロナウイルス感染症「COVID-19(coronavirus disease-2019)」のウイルス「SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)」は,気道粘膜,分泌物に多く含まれ1,唾液にも存在することが知られており2,感染者の咳,くしゃみ,会話で大小飛沫となって外に出る.発生する飛沫の大きさは,0.25μmから数mm程度で,大きな飛沫はすぐに落下し遠くまで飛ばず,1.8m離れていれば飛沫感染リスクを低減できるため,日本では2mのフィジカルディスタンス(ソーシャルディスタンス)の根拠となっている.一方,小さい飛沫で水分が蒸発し,サイズが5μm以下となったものを飛沫核とよび,この飛沫核や小さな飛沫は一定時間空気中に漂うためエアロゾルに分類される(図2).これらの微粒子を吸い込むことで感染したと推測された事例3,4があったことからエアロゾル感染と言われるようになった(図3).しかし,エアロゾル感染という言葉は感染症学における定義はない.麻疹ウイルスや結核菌のように強い感染力で空気中に漂い続ける空気感染(飛沫核感染)と区別するために,エアロゾル感染はマイクロ飛沫感染とも言われる. 歯科医療現場で生じる飛沫やエアロゾルは,タービン,超音波スケーラー使用時に多く見られる(図4).エアロゾルは,きわめて小さな飛沫と考え,飛沫の発生を知ればエアロゾルについて理解しやすくなる.院内感染,医療安全上,問題となるのは病原性感染性物質を含んでいる飛沫やエアロゾルである.処置後,気づかない間に白衣や眼鏡のレンズに血痕が付着していた,ということはおそらく皆経験していると思う.血液飛沫は大きく認識しやすいので,医科も含めてこれまで多くの報告がある(表1)5〜12.歯科では埋伏智歯抜歯で66.3%〜80%12〜14,歯冠形成92%15,歯石除去で40%15と,手術時間や出血量から考えると比較的高い血液暴露率である.この口腔内手術,処置の血液飛沫は,注水や唾液,浸出液,切削片とともに飛んで来ていると考えられ16,唾液石濱孝二大阪警察病院 歯科口腔外科連絡先:〒543‐0035 大阪府大阪市天王寺区北山町10‐31Ishihama KohjiDepartment of Dentistry, Oral and Maxillofacial Surgery, Osaka Police Hospitaladdress:10-31 Kitayama-cho, Tennouji-ku, Osaka-shi, Osaka 543-0035歯科・口腔外科における エアロゾル飛散の実態とその対応Aerosol Dispersion in Dentistry and Oral Surgery Settings, the State and the Correspondence22
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