口腔内スキャナーはじめて講座_コピー
4/6

 前準備が終了した後には、実際の診療におけるアシスタント業務が始まる。IOSによるデジタル印象採得には、従来の練成印象材による印象採得とは明らかに異なる点が多い。歯科衛生士はこの点を的確に理解することで、特徴的なアシスタント業務を適切に実行可能となる。本項では、実際のIOS使用におけるアシスタント業務について解説したい。 IOSは光源を内蔵しており、カメラ先端から発する光がスキャン対象物に当たって反射したものを捉えてバーチャルモデルを構築している。そのため、ユニットの無影灯を点灯したままだとハレーションを起こしデータ集積の妨げとなる。よって、アシスタントは印象採得前に無影灯を消す必要がある(図3-5)。またIOSの機種によっては高度に研磨してあるジルコニアや金属の修復・補綴装置が隣在歯などに装着してある場合に、過度な反射が原因で適切なデータ構築を行えない場合がある。その際は専用のパウダーを準備し、噴霧することで過度な反射を抑制し印象採得を滞りなく実行できる(図3-6)。 IOSによるデジタル印象採得は、動かない物をターゲットとしている。この動かない物とは硬組織が主である。これと比較して練成印象材による印象採得では、動かない硬組織はもとより可動性の軟組織でもトレーや印象材自体により加圧し、固定してしまえば印象採得が可能となる。一方、デジタル印象採得ではこれと比較してトレーや印象材による加圧・固定や圧排が行われないため、窩洞や支台歯の印象採得時に舌や頬粘膜が障害となる(図3-7)。このように撮影部位に頬粘膜や舌が写りこんでしまうと、適切なバーチャルモデルが構築されず正確な修復・補綴装置が製作できない(図3-8)。 IOSの進歩にともない、機種によっては自動的に映り込んだ舌などを削除する機能をもつものもあるが、やはり最初から写り込まないに越したことはない。また唾液が多く支台歯などの周辺に貯留している場合も不正確なバーチャルモデルの構築につながる2。これらを排除し、適切なデジタル印象採得を行うには歯科衛生士の介助が必要かつ重要である。39図3-5 デジタル印象採得の前に無影灯を消しておくことでハレーションを防ぎ、最適なバーチャルモデルを構築することができる。図3-6 状態によってはデジタル印象採得を適切に行うためにパウダーを口腔内へ噴霧する場合もある。これらの準備や対応を歯科衛生士が確実に行えれば、IOSを用いた治療がスムーズなものになる。IOSの活用に欠かせないアシスタントワークIOSによるデジタル印象採得のアシストにおける注意点①【デジタル印象採得:的確なアシスタントワークでデジタル歯科診療の質を向上しよう】

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る