は図28、29のとおりである。直接維持装置のレストからなるべく遠心の遠い位置に間接維持装置を設定する。また、前歯に限局した欠損であるのに反し、口蓋後方まで床を延長しなければ義歯は安定しない。この力のコントロールをよく患者に説明しておかないと、前方だけの欠損に対して後方に大きすぎる義歯を作られたと誤解を招きやすいので注意を要する。前方遊離端欠損の症例を図30に示す。図28 前方遊離端欠損の義歯の設計要点。犬歯が喪失している場合図29a~f 前方遊離端欠損の義歯の設計サンプル。a~cは犬歯が残存し、d~fは喪失しているケースであり、犬歯の有無が設計に大きな変化をもたらす。犬歯が喪失した場合には、義歯に過大な咬合力がかかることを念頭に置かねばならない。その力に対抗するべくフルクラムラインから離れた位置に強固な間接維持装置を設けるべきである。 臼歯の直接維持装置は通常の遊離端義歯と同じと考える。欠損側と反対側とにレストを配置する(なるべく欠損側に倒れ込まないように)。I-barも遠心に設定する。これは審美性への配慮と、臼歯遊離端義歯と同様に、咬合力が加わった時にI-barが歯面から離れるような設計となるためである。abcdefI-bar双歯鉤ガイドプレーンI-bar双歯鉤レストパラタルストラップレストパラタルストラップ直接維持装置フルクラムライン間接維持装置直接維持装置間接維持装置フルクラムライン74■ 前方遊離端欠損の義歯の設計要点■ 前方遊離端欠損の義歯の設計サンプル犬歯が残存している場合5)前方遊離端欠損(前歯中間欠損) 前方遊離端義歯の特徴は、前歯で咬合する時、特に上顎義歯の場合に下顎の突き上げによりレストを中心に回転し、脱離を起こしやすいことである。前方遊離端欠損では、「噛むとすぐ外れてしまう」という患者の訴えは多い。また、下顎の突き上げにより上顎粘膜がフラビーガムになるおそれがある。 前方遊離端欠損の義歯の設計要点と設計サンプル長期症例に学ぶパーシャルデンチャー
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