● ケース情報患者 10歳、男児主訴 物が噛めない。診断および治療経過 患者は他院にて急速拡大装置による矯正治療を3年間受けたが、治療途中から咬合ができない状態が続いていた。治療終了時にも状況は改善しないため担当医に相談するが、時間ととも改善すると説明を受け、経過観察中であった。しかし半年経った後もうまく噛むことができないめ、当院へ転院した。 問題発生状況これは困った!!178chapter11保定症例、再治療症例に学ぶ53a53d来院時口腔内写真。上下顎歯列弓幅径の不一致を認め、右側側方歯部の鋏状咬合を認める。₆₆₆₆における前頭断CBCT像からも右側に鋏状咬合を認め、左側臼歯部においても十分な咬合を獲得できていない。case53b53e53c53f解説:根津 崇 口腔内診査を行ったところ、上顎歯列の過大な拡大の結果、左側側方歯部のわずかな咬合接触があるのみで、右側側方歯部においてはまったく咬合接触を認めなかった。右側側方歯部は鋏状咬合を呈しており、I級の大臼歯関係おいて一致すべき₆₆近心舌側咬頭間距離と₆₆中心窩間距離に11mmの差を認めた。また、₃の萌出スペースが不足し、上下顎歯列弓形態にも大きな不調和が生じていた。顔貌診査においては鼻翼部に過剰な側方への伸展があり、正面バランスの不均衡を呈していた。● 問題発生後にとった対応 上下顎歯列弓幅径の一致を図るため、上顎歯列の縮小化と下顎歯列の拡大を行った。また₃の萌出スペースを獲得し、上下顎歯列弓形態を修正し、咬合が安定することを確認して治療を終了した。顔貌においては、鼻翼部のバランスが回復した。53過大な側方拡大により鋏状咬合が生じた
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