お口のなかの悪いやつら
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来、内外の研究者とともに研究するなか、ジンジバリス菌は、菌体のもつ線毛の違いによって病原性に違いがあることが、大阪大学の天野敦雄先生によって明らかになりました。なかでもタチの悪い線毛をもつジンジバリス菌は、強固にくっついて悪玉3兄弟のスクラムを最強にします。そうやって歯の周りの組織や血管の細胞内に入り込む能力を高めているのです。 また、ジンジバリス菌のもつタンパク質分解酵素ジンジパインは、驚きの威力で私たちを襲います。手下の細菌たちを調子づかせてのさばらせ、歯周病を悪化させるのです。 ジンジパインは周囲の細胞を傷つけて、ジンジバリス菌の線毛の細胞への付着力を増強します。これによって悪玉3兄弟の結束を高めたジンジバリス菌は、巨大な細菌集団のかなめとなりバイオフィルムを築きます。細菌は単細胞ですが、バイオフィルムをつくった悪玉3兄弟のやつらはまるで多細胞生物のように振舞って、口のなかに居座ります。歯ぐきの血管にジンジパインが入り込むと、赤血球が固まって血流が滞ります。そこに内毒素もばらまかれると、免疫細胞がかく乱され正常に働かなくなります。過剰な免疫反応を起こした免疫細胞は暴走して、防御機能が破綻してしまいます。しかも私たちの研究では、ジンジパインの威力はストレス物質によって強まることがわかりました。ジンジバリス菌は人のストレスすらキャッチして病原性を高めます。歯周病は生活習慣に関連する細菌感染症です。過労や睡眠不足、心の疲れなどがジンジバリス菌につけ込まれる隙となり、やつらを助長させてしまうことを決して忘れてはなりません。ストレス物質が●歯ぐきを壊して栄養をゲット●歯ぐきへの付着力を強化●仲間の悪玉菌を凶暴化させる●内毒素とともに免疫細胞をかく乱細菌の悪行を応援?!    33タンパク質分解酵素ジンジパイン内毒素免疫細胞Chapter 3歯周ポケットに潜むグラム陰性菌ジンジバリス菌がストレスに乗じて大暴れ?!最強の武器ジンジパインとは?

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