日常臨床においてもっとも多用されているLOTといえば,矯正的挺出(extrusion)であろう.その目的は,歯を垂直的に歯冠側に移動させることにあり,多くは健全歯質を主に歯肉縁上に求めたいときに用い,その後の補綴治療と予後を確実なものとするために行われる.他にも,歯根膜の誘導能を利用して歯の周囲の骨組織や軟組織を増大したいときにも行われる. 過去から現在に至るまで,歯科雑誌など臨床系学術誌にて目にする機会も多く1〜3,それだけ身近な処置であり,それこそアイデア次第でさまざまな治療に応用できる非常に汎用性の高いテクニックといえる.ビギナーでも比較的簡単に歯の移動を行えるため,これからLOTを始めようとしている若手歯科医師にとって,ぜひ身につけていただきたい,まさにうってつけのテクニックである.今回は,このAbout the Author矯正治療,学びの遍歴東京都開業 上野歯科連絡先:〒176‐0012 東京都練馬区豊玉北1‐2‐17‐1FQ.矯正治療をどうやって学んだ? 卒後勤務した歯科医院にて矯正専門医にベッグ法を学ぶ.その後,ベッグ法から派生したティップエッジテクニックを宮島邦彰氏らに学び,自身の矯正臨床の柱として日常臨床に取り入れている.Q.矯正治療に本格的に取り組むようになってからの年数は? 20年程度.【略歴】1996年 日本歯科大学卒業1999年 上野歯科勤務2006年 同院長【所属学会・勉強会】日本臨床歯科学会,日本矯正歯科学会,日本顎咬合学会,日本ティップエッジ矯正研究会Q.矯正治療において拠り所としているあるいは参考にしている論文・書籍は?“矯正的挺出”についてケースを供覧しつつ,述べさせていただく.必ず知っておきたいこと 歯の移動には必ず固定源が必要であるため,確実な移動を行うための固定源を確保しなければいけない.基本的に固定源は動かしてはならないことが前提であり,負荷に対して十分に抵抗できることが必要とされる.そうでないと動かしたくない歯が動き,動かしたい歯が動かないという問題が起きてしまう.LOTの場合,固定源として十分抵抗できるだけの大きな歯や数歯をまとめて利用したり,矯正用アンカースクリューなどTAD(temporary anchorage device)を利用し,固定源を得ることが多い.少数歯のLOT28別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2022」上野博司①Kesling PC(著),宮島邦彰(訳).TIP-EDGE PLUS GUIDE.滋賀:日本ティップエッジ矯正研究会,2015.②亀田晃(監修・編集).新版 歯科矯正学事典.東京:クインテッセンス出版,2018.③Proffit WR(著),高田健治(訳).新版 プロフィトの歯科矯正学.東京:クインテッセンス出版,2004.はじめに:一般歯科臨床における矯正治療とGP矯正の有用性補綴前処置としての矯正的挺出PART2
元のページ ../index.html#3