あなたの根管治療はここがまちがっている!
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症例19 水酸化カルシウムを貼薬しても滲出液が止まらない症例ab77CHAPTER 4 難治症例の根管治療——大きな根尖部病変,水酸化カルシウムが効かない病例,幼若永久歯【滲出液が止まらない大きな根尖部病変への対応/根管吸引法】水酸化カルシウムを貼薬しても大きな根尖部病変を有する歯は,病変由来の根管滲出液をしばしば多量かつ継続的に排出する.そのような症例で,「根管吸引法」は手軽に購入できる器具を使用して実施でき,かつ有効な方法である.症例19a 患者は69歳,女性.初診時の2.患歯根管から多量の滲出液が排出された.症例19b 最初の紹介初診時の術前エックス線写真(2010年).患 者 69歳,女性主 訴 2の痛みと歯肉の腫れ現病歴 患歯2は4年前から紹介元歯科医院で感染根管治療を行なっていたが経過不良で,紹介来院で筆者が治療相談を受けた(2010年).約1年経過時に,患歯の臨床症状が軽減したので,紹介元歯科医師が根管充填を実施攻略の指針した.しかし,根管充填1年後に再度歯肉が腫脹し,やむなく根管充填物を除去して再感染根管治療を再開した.その後も臨床症状(歯肉腫脹と滲出液の排出)が一向に治まらないことから,大学病院での専門的見地からの治療が必要と紹介元歯科医師が判断し,再来院した(2014年).患者には通常の感染根管治療では治癒させることが難しいことを説明したが,非外科的治療を強く希望した.患者は2型糖尿病であり,また年齢を考慮して長期間の根管治療の可能性を説明した.再初診から約7か月後に根管滲出液が消失した.その治療期間中,滲出液を積極的に排出させる「根管吸引法」を行い(症例19f),また根管貼薬を行わずに,超音波洗浄(「オサダエナック超音波洗浄針」長田電気工業)を丹念に実施した.さらに4か月後にガッタパーチャ側方加圧根管充填を終了させた(症例19i).根管充填2年経過エックス線写真で病変部の縮小が確認された(症例19j).症例説明最初の紹介来院時より約3年半経過後の再初診時に自発痛はなかったが,軽度の打診痛を訴えた.また,2の根尖相当部歯肉の発赤と腫脹が観察された.エックス線写真で根尖部を包囲するように限局性の大きな透過像が観察され,根尖部病変内と根管内には水酸化カルシウム貼薬剤と思われる不透過像も確認された(症例19b).初回にう窩の開拡を再度行い,髄室付近の感染歯質を完全に除去して再感染根管治療を実施した.根管内の水酸化カルシウム糊剤の除去時に,出血をともなう排膿が認められた.

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