あなたの根管治療はここがまちがっている!
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c症例18c 口蓋側部に腫脹が認められ,患歯より多量の根管滲出液が排出した.b症例18b 初診時の患歯.a症例18a 大きな歯根嚢胞様病変症例.患者は23歳,女性,初診時. 症例18 大きな歯根嚢胞様病変に根管内チューブ療法を行った症例74【大きな歯根嚢胞様病変への対応/大きな病変であっても,根管治療の標的は狭小な根管系】 術前のエックス線写真で根尖相当部に大きな根尖部病変を確認しても,通常の感染根管治療でその病変を治癒させることができる.根管治療の標的はエックス線写真上に認められる大きな病変ではなく,病変を引き起こしている原因歯の狭小な根管系( root canal system )である. すなわち,大きな根尖部病変を感染根管治療で治せる否かの判断は,患歯の根管内の小さな有害物質を的確に除去できるか,にかかっている.患 者 23歳,女性主 訴 2の口蓋部粘膜の腫脹現病歴 約10年前に患歯2のう蝕治療でコンポジットレジン充填処置を受けた.それから約1年後に患歯の口蓋部粘膜が大きく腫脹し,紹介元歯科医院で感染根管治療が開始された.約2か月後に臨床症状が軽減したので攻略の指針来院2回目に患歯の根管拡大を終了させ,以後,根管洗浄を行いながら経過観察したが,一向に根管滲出液の根管充填を終了させ,経過観察を行っていた.しかし半年後に再度左側口蓋部粘膜が腫脹し,やむなく根管充填物を除去して再感染根管治療を再開した.その後,臨床症状(歯肉腫脹と滲出液の排出)が一向に治まらないことから,大学病院での専門的見地からの診査と治療を勧められ紹介来院した.減少は認められなかった.その間,緊密仮封をすると痛みや腫脹を発現することもしばしばで,頻回の来院および開放排膿の緊急処置が繰り返された.約3か月後に根管滲出液を積極的に排出させる目的で,根管内に中空状の金属チューブを仮封セメントで仮設置した(症例18g).さらに3か月間,根管滲出液の排膿路を確保して感染根管治療を継続した.次亜塩素酸ソーダを主として根管洗浄を毎回行った.感染根管治療を開始して約6か月後に臨床所見の改善が認められたため,側方加圧根管充填を終了させた(症例18i).その後,13年の長期間にわたり経過観察を行った(症例18j~t).症例説明口腔内所見では上顎左側口蓋部が大きく腫脹していることが認められ(症例18c),エックス線写真で根尖部に拇指頭大の限局性の透過像が確認された(症例18d).前歯部唇側歯肉には著明な発赤・腫脹は認められなかった.2両隣在前歯は電気歯髄診で生活反応を示した.初診時にラバーダム防湿下で仮封材を除去したところ,血液が混在した多量の滲出液が排出した(症例18e).

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