歯科技師・歯科技工士のためのゼロから始めるデジタル時代のインプラント補綴
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adbec図1a~e 患者は55歳男性。下顎左側大臼歯部にインプラント治療を希望し来院された。口腔内スキャナーにて印象採得、CT撮影を行いインプラント埋入シミュレーションソフトによりデジタルワックスアップを行った。それを基に、補綴主導型インプラント治療を行うための埋入ポジションを計画した。48Part 2 最新のデジタル技術を用いたインプラント補綴Chapter1インプラント埋入シミュレーション用ソフトとガイドシステムを知るはじめに:総論インプラント埋入」においてはすべての条件で適正な埋入を行うことができない場合もあり、このことが予後に影響をもたらす状況も生じるだろう。 この補綴主導型の治療を実現するために、現在では各インプラントメーカーがインプラント埋入シミュレーション用ソフトを用いたガイデッドサージェリーの利用を推奨している。最近では術者の間にも、この必要性・有用性が浸透してきたと考える(図1~4)。 オッセオインテグレーション獲得の失敗を除くインプラント体のロスト(脱落)の原因を列挙してみると、①インプラント周囲炎、②不適切な咬合、③補綴装置形態の不良、そして④不適切な埋入ポジション、の4つが考えられる。④の不適切な埋入ポジションは、結果としてその他の原因にも関連してくる。 とはいえ、埋入したインプラント体が不適切な埋入位置、深度、角度にあることで補綴形態、歯周環境に悪影響を与える懸念があっても、インプラントを除去して再埋入を考えることは骨の条件をはじめ臨床的に難しい場歯科医師:谷尾和正 欠損補綴の治療方法としては、ブリッジ、義歯、インプラントといった選択肢が考えられるが、残存歯への負担や確実な機能回復などを考えた場合、インプラント治療の有用性は大きいと考える。 近年においてはインプラント治療を行う際、咬合・発音などの機能回復のみならず、審美的な治療結果、治療期間の短縮、さらにより痛みのない治療と、患者の求める要望もさまざまとなってきた。 こうした中、インプラント治療に限ったことではないが、上記のような患者の要望に応え確実な治療結果を実現するために、施術前の診察、検査、診断の過程において最終補綴装置の形態・機能を考慮した治療計画を立案する「補綴主導型インプラント治療」(restorative-driven implant treatment)を行うことが現在の主流である。しかし、治療結果の長期にわたる維持・安定は術者・患者双方の願いであるが、従来の「術者の経験と感覚で行うインプラント埋入シミュレーション用ソフトを活用した例

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