96小野晴彦大分県開業 おの歯科医院患者:57歳,女性,非喫煙者.症例概要:歯周病を治療したいとの主訴で2015年に他院から来院.全顎的に深い歯周ポケット(4~9mm)があり,臼歯部欠損を認め,プラークコントロールは不良であった(図6-4-1a~i).Stage Ⅳ,Grade B,広範型中等度慢性歯周炎と診断し,歯周基本治療と並行して保存不可能な歯の抜歯,不適合補綴装置の除去,プロビジョナルレストレーションへの置き換えを進めた.治療経過:当初,患者からセルフケアに対する協力が得られにくかったが,歯科衛生士による粘り強いセルフケア指導のおかげで,PCRは51%から21%へと改善した.しかし,PDT(photodynamic therapy)を併用した歯周基本治療を行ったにもかかわらず,インプラント周囲の骨吸収は急速に進行し(図6-4-1j),排膿も最後まで止まらなかった.ただし,粘膜の炎症はほとんどなくなったため,外科的再生療法が適用可能と判断し,₅~₃と₆インプラント部のデブライドメントも含めた歯周組織再生材(エムドゲイン〔EMD〕, ストローマンジャパン社)と骨補填材を併用した外科的再生療法を計画した. Er:YAG Laserを肉芽除去に用いることで,不良肉芽をほぼ一塊にして除去することができた(図6-4-1k~n).これはEr:YAG Laserの特徴でもあり,出血も少なく明視野で界面を見ながら操作できる利点があると考えている.また,そのまま殺菌効果をともないながら2根面やインプラント表面のデブライドメントに移行できるので,確実なデブライドメントが可能である. 外科的再生療法から10か月後,軟組織の状態は良好であり,デンタルエックス線写真でも硬組織の増大を認めたため(図6-4-1o~q),歯周ポケット減少と骨レベルの平坦化を目的にリエントリー手術を行った.インプラント周囲の硬組織は十分に増大し,インプラント周囲の骨縁下欠損は消失していた.歯肉弁の厚みを調整し,一次治癒となるように縫合した(図6-4-1r~u).本来であれば遊離歯肉移植を併用し角化粘膜の確保を目指すべき状況であったが,オトガイ孔が高い位置にあり,部分層弁の形成にともなう神経損傷のリスクが高いと判断したため,遊離歯肉移植は行わなかった.術後経過:リエントリー手術より6か月後,最終補綴装置を装着した.患者のプラークコントロールは,歯科衛生士の努力により顕著に改善しており,メインテナンスに対するコンプライアンスも良好である.下顎左側の補綴装置周囲粘膜は頬小帯の高位付着があり,角化粘膜の不足も相まって清掃しにくい状況であるが,5年経過後の現在は良好な状態を保っている(図6-4-1v~bb).インプラント周囲炎はEr:YAG Laserでこう治す!インプラント周囲炎はEr:YAG Laserでこう治す!症例インプラント周囲炎に対して,EMDを併用した外科的再生療法を1行った症例4Er:YAG Laserを用いたインプラント周囲炎に対する再生治療をともなう外科的アプローチ:その4
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