インプラント周囲炎はErYAG Laserでこう治す!
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a図5-13a〜c チタンベースアバットメントの高さが異なる補綴装置(a,参考文献13より引用),メーカーによりいくつかの高さのチタンベースアバットメントが選択できる.bは1mmと2mmのチタンベースアバットメントを使用したスクリュー固定式のフルジルコニアクラウンで,₆相当部周囲骨が圧迫されているように見える.cは2mmと3mmのチタンベースアバットメントを使用したスクリュー固定式のフルジルコニアクラウンで,骨へのチタンベースの近接は認められない.bに比べ,cのほうが将来的なMBLのリスクは低いと考えられる14,15.bc73デザインを考慮する必要がある. 過度なエマージェンスプロファイルが一因で,インプラント周囲炎を進行させたと思われる症例を提示する(図5-12).③チタンベースのアバットメントの選択 最終補綴装置の材料として,ジルコニアが選択されることが多いが,そのチタンベースのアバットメントの位置が骨縁下深くで周囲骨を圧迫することによりMBLが生じることが報告されている.論文では,1mmの高さのチタンベースのアバットメントではなく,3mmの高さのものを利用し,骨からその位置を離すことでMBLが有意に抑制できると報告されている19,20(図5-13).④過度のクラウン-インプラント比(C/I比) 長径が8mmを超えるインプラントでは,C/I比が大きくなってもMBLは少ないとされているが,長径が6.5mm以下のショートインプラントではC/I比が2より大きいと有意にインプラントの生存率が悪くなると報告されている21.⑤咬合 咬合接触や咬合面形態においては,直接的にインプラント周囲炎との関連性を示すリスクファクターは報告されていない. インプラントの咬合に関しての推奨事項は,文献上不足しており,現時点の治療指針としては天然歯と同様の咬合接触を与えることで臨床的に問題ないとされている22. 本章では,インプラント周囲炎の発症予防のためのポイントについて記載したが,その原因として未だ明確なエビデンスのあるものが少ないのが現状である. しかし,インプラント周囲炎は1つの原因でなく,多因子が複雑に作用することで発症リスクがより高まると推察されるため,現在判明しているリスクファクターを把握し,現時点ではエビデンスのない要因でも,関連性が疑われるものはできる限り減らすことが重要と考える. われわれ歯科医師は,患者の「早く噛みたい」というニーズに少しでも早く応えるべく,思考が「インプラントを応用した機能,審美回復の方法や手段」に偏りがちである. しかし,インプラント周囲炎を予防するためにはまず,「歯を喪失した原因について十分考察すること」が重要である.とくに,残存歯の歯周病はインプラント周囲炎の原因として強いエビデンスがあるため,残存歯の歯周治療を含めた1口腔単位での,永続性のある治療計画の立案が不可欠である.第5章 インプラント周囲炎の発症予防を見据えた補綴3.まとめ

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