インプラント周囲炎はErYAG Laserでこう治す!
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振幅振幅波面位置位置1)各種レーザーの特性の違いとインプラント周囲炎治療への応用8 そもそも レーザー(laser)とは何だろうか.Laserとは,「light amplification by stimulated emission of radiation;誘導放出による光増幅放射」の頭文字をとった造語である. その特徴は,a.単波長である(周波数が一定),b.高輝度性(非常に明るい),c.単色性(周波数が一定なので可視光の場合は,色が混ざり合ったものではなく純粋な一色である),d.指向性(ほとんど広がることなく波長が真っ直ぐ飛ぶ),e.エネルギー集中性(波長が揃っているので,レンズなどで絞るとエネルギーを非常に小さな点に集中させることができる),などの特徴をもった電磁波(光)である.それゆえ,レーザー光は電球やLEDなどの普通の光(インコヒーレント)とはまったく特性が異なる特殊な光(コヒーレント)である(図1-1). 本章では,レーザーの基礎知識を述べたうえで,インプラント周囲炎治療におけるEr:YAG Laserの活用について解説していきたい. 前述した特殊な特性をもつレーザー光(コヒーレントな光)には,歯科における代表的なものとして,CO₂ Laser,Nd:YAG Laser,Diode(半導体) Laser,Er:YAG Laserなどがある.これらは一括りで「レーザー」として認識されがちであるが,それは誤りである. 本項では,その誤認識を払拭するために各種レーザーの波長の違いやインプラント周囲炎治療に対する使用の考え方について解説する.①CO2Laser CO2 Laserは,レーザーを発振するために気体のCO2(二酸化炭素)を発振媒体としてつくり出したレーザー光である.波長は10.9μmであり,組織の表層で吸収される表面吸収型レーザー(図1-2)に分類される. 主に水,硬組織などに吸収される(図1-2,3)が,温度上昇が激しく,Er:YAG Laserのように歯質を蒸散することは一部の機器を除き不可能である(図1-4,5).さらに,水に対する吸収特性はEr:YAG Laserの1/10程度であり(図1-6),臨床的には軟組織の止血および蒸散が主となるため,骨再生に対する応用は熱的損傷を加味すると限局的であると考えられる. チタンに対する吸収は,反射率が高いものの,一度吸収し始めるとカルシウムなども吸収してしまうため,結果的にインプラント体の温度を大きく上昇させてしまう.そのため,インプラント体に対する照射には細心の注意が必要である.②Nd:YAGLaser Nd:YAG Laserは,レーザーを発振するために個体のneodymium:YAG(ネオジムヤグ)を発振媒体としてつくり出したレーザー光であり,波長は1.06μmである. レーザーの名前にYAG(yttrium aluminium garnet)とついているので,Er:YAG Laserと混同して理解される場合があるが,性質的にはまったく真逆の性質(水にほぼ吸収しない,硬組織に吸収しない,など)で,組織の深部までレーザー光が入り込みやすい深部透過型レーザーに分類される(図1-2,3,6). 主にタンパク質などに吸収し,特性としては黒なインプラント周囲炎はEr:YAG Laserでこう治す!図1-1 歯科医師の多くは,大学で「レーザー歯科学」を学んでいない.そのため,レーザーの本質や正しい使い方を深く理解せずに,レーザーを使用しているかもしれない.はじめに1.概論

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