東京都開業 銀座矯正歯科連絡先:〒104‐0061 東京都中央区銀座3‐3‐14 銀座グランディアⅡ6F Speed Orthodontics Using Modified Corticotomy:an Approach to Adult Crowding CaseRyo Nakajima, Shinichi Fukasawa中嶋 亮/深澤真一トレンド臨床家のための矯正YEARBOOK 2022198 不正咬合治療において,叢生を解消するためのスペース作りとして考えられる手段は抜歯,隣接面削合(InterProximal Reduction,以下IPR)または遠心移動を含む拡大治療である.筆者(中嶋)が矯正歯科の専門課程を修了した日本大学松戸歯学部歯科矯正学講座では,マルチブラケット治療の基礎についてTweed法を通して学ぶ.Tweed法では抜歯基準をTotal discrepancyが−4mm以下としているが,この基準では叢生量の多い日本人不正咬合患者の多くが抜歯適応症例となる. 近年の器材・矯正材料の進化による診断方法や矯正治療システムの変化にともない,臨床における抜歯基準は随分変化しているように感じるが,「The best balance and harmony of facial lines」として顔貌を重視した治療結果を求めたTweedの治療目標は普遍的なものと言える. 当院ではどのような治療にも診査・診断が先立ち,抜歯・非抜歯の決定に際しては患者の希望を考慮した上で顔貌のバランスと咬合・歯周組織の状況を検討し,複数の治療ゴールを提案している. 治療ゴールの決定には患者の希望する治療期間も影響する.進学,就職や挙式,または海外移住といった社会生活の変化に応じて治療期間のコントロールを求める患者や,コロナ禍においていわゆる“マスク生活”中に矯正治療を完了させたいと希望する患者も多い.つまり,現代の矯正歯科治療には,患者と矯正歯科医が納得できるもっとも効率的な治療期間で動的治療を完了させる必要性が生まれた.しかしながら,矯正歯科の歯の移動の効率化は近年の新しいテーマではなく,長年にわたって研究され試行されてきたものである.寿谷1は成人矯正の問題点として3つのRとして歯根吸収Resorption,歯肉退縮Recession,後戻りRelapseを列挙している.近年でも矯正治療による歯列拡大は歯肉退縮や後戻りの原因となることが示唆されており,bone housingを意識した治療計画の立案が重視されている.また,上顎前歯の口蓋側移動において,前歯歯根が切歯管へ近接することによって歯根吸収のリスクが増すという報告もある2. これらの解剖学的な歯の移動限界を寿谷は「Enve-lope of Discrepancy」として図説しているが(図1),各種の外科処置を併用することによって歯の移動限界を拡大させることが可能となり,その手法のひとつとしてコルチコトミー併用矯正について報告している1. 加速矯正は大きく分けて外科処置を併用するものとしないものに分類される(図2).外科的手法としての寿谷法コルチコトミー併用矯正はその後WilckoらによるWilckodontics3(PAOO,AOO),ParkらのCorticision4,DibartらのPiezocision5とThe best balance and harmony of facial lines成人矯正の問題点と社会生活の変化への対応としての加速矯正モディファイドコルチコトミー法を用いたスピード矯正成人叢生症例へのアプローチ
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