8 歯科治療においては、治療にともなうストレスや局所麻酔薬に含まれる血管収縮薬により、血圧上昇をきたすことがある。特に動脈硬化の進行した高齢者では血圧の変動が大きい。 血圧が著しく上昇すると、急性大動脈解離、心不全、高血圧性脳症などの重篤な合併症を発症することがある(高血圧緊急症)。 高齢者に対しては初診時に血圧測定を行い、未治療高血圧は内科的治療を優先する。 高血圧症患者の歯科治療前には、当日の降圧薬の内服状況について確認し、血圧を測定する。治療開始前の血圧が180/110mmHg以上の場合は、当日の歯科治療を中止する。 治療中は間欠的に血圧測定を実施する。 高血圧緊急症の際は、救急要請とともに適切な降圧処置を行う。 血圧とは、心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す圧力のことを指します。血圧を決定する主な要因として、心臓が1回の拍動で全身に送り出す血液量(心拍出量)や血管の弾力性のほか、血液が血管に流れ込む際の末梢血管の抵抗力(血管抵抗)、血液の粘度などが挙げられます(図1)。収縮期血圧は、血液を送り出すときに心臓が収縮している時の圧で、拡張期血圧とは、次に送り出す血液をためこむために心臓が拡張しているときの圧を指します(図2)。安静時でも慢性的に血圧が高い状態が続いていることを高血圧症といいます1。 日常の歯科診療において全身的になんらかの配慮が必要となる基礎疾患のうち、もっとも頻度が高いのは循環器疾患患者です。歯科を受診する患者さんが罹患している代表的な循環器疾患として、高血圧症、冠動脈疾患、不整脈、心不全、弁膜症、脳血管疾患などが挙げられます。血圧とは?高血圧症 ─血圧が高いと何が問題になるの?─ここがポイント循環器疾患
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