図解矯正歯科治療が面白いほどわかる本
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第4章 「マルチブラケット治療」の実際タイバック 上顎右側側切歯を歯列に取り込むだけのスペースが確保できたので,同歯にブラケットを装着し,ワイヤーサイズを落として再レベリングを行い,上顎右側側切歯の舌側転位を改善しました(図30).この際,上顎右側側切歯に下顎右側犬歯との強い咬合干渉があったため,NTワイヤーに三嘴鉗子を用いたワイヤーベンディングを行い,干渉を回避しています(図31).側切歯の反対被蓋改善後も下顎位は変化しませんでしたので,下顎は予定どおり左右の第一小臼歯を抜歯することにしました. いよいよ下顎のスタートです.下顎前歯部に叢生がある場合,この時点で下顎前歯部にはブラケットは装着しません.下顎前歯部の歯槽骨の厚みは薄い場合が多く(p.36参照),叢生がある状態で下顎前歯部にブラケットを付けてレベリングを行うと,下顎前歯が唇側に移動し,歯槽骨から出てしまうリスクがあるからです(図32〜34). 下顎の最初のワイヤーとして使用している「Braided wire*」は,複数の細いステンレススチールワイヤーを編み込んで作られた,非常に柔軟性に富んだワイヤーです. 下顎前歯にワイヤーが常にあたっている状態にする Upper  .018 NT ➡ .017×.025 NT ➡.017×.025 SS ➡ .019×.025 SS(図30,31) Upper  303232 Lower  .017×.025 BD*➡ .017×.025 NT ➡ .017×.025 SS ➡ .019×.025 SS(図32〜34)図34 クリンパブルフック.ワイヤーに付与することにより,タイバックしたり,顎間ゴムをかけたりできるフック.*Braided wire:8本の細いワイヤーを編み込んで作られている,非常に柔軟性に富んだ角ワイヤー.3133175

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