現在のジルコニアレストレーションの設計とシェーディングの考えかた29②thin layering ジルコニア唇側面を0.3〜0.4mm程度カットバックし、唇側面に極薄のポーセレンレイヤー層を焼成する。③light layering ジルコニア唇側面を0.5〜0.8mm程度カットバックし、唇側面に薄いポーセレンレイヤー層を焼成する。④full layering ジルコニア唇側面を0.9mm〜1.3mm程度カットバックし、唇側面(必要な場合は舌側面にも)にポーセレンのレイヤー層を焼成する。2)ジルコニア舌側バッキングのデザインa.歯冠すべてをジルコニアでカバーする。切縁、隣接面コンタクトポイントまでをジルコニアとする。モノリシッククラウンに適用される。b.舌側は切縁までジルコニアでカバーする。辺縁隆線付近から隣接面までのオパール効果と透光性を再現するために、両側隣接面(必要なければ片側のみ)にポーセレン築盛のためのカットバックを行う。c.切縁領域のオパール効果と透光性を再現するために、該当する切縁の一部(必要に応じては切縁すべて)をカットバックし、ポーセレン築盛を行う。d.切縁部と辺縁隆線付近から隣接面までのオパール効果と透光性を再現するために、切縁と両側隣接面にポーセレン築盛のためのカットバックを行う。1)monolithic(組み合わせ:前項の①&a) 前歯部の補綴において、近年ではモノリシックタイプで完結されるケースも少なくないことがうかがえる。しかし筆者の臨床上では、前歯部をジルコニア表面にステインを塗布しただけの補綴装置で完結したものはない。なぜならステインを数回に分けて塗布・焼成を繰り返し、なおかつ表面性状(surface texture)を付与するためには、結局のところグレーズ材を厚目に塗布し、その後極薄の層で形成しなくてはならないためである。この作業中に下地にあるステインの塗布膜に到達してしまい、その箇所を剥ぎ落としてしまうという可能性も十分にある。 これだけの作業工程を経るにもかかわらず、完成されたそれはポーセレンをレイヤリングした補綴装置と比較して完成度と品質で劣っていることを筆者は懸念するものである。さらに言及するならば、ステイン法では天然歯に存在するオパール層の再現を行うために、ジルコニア表層にブルー系のステイン材を塗布するわけだが、この操作と作業では天然歯オパール層を再現することはほぼ不可能でなかろうかと思っているためである。とくに口腔内で観察した際、ペイントされただけのブルーは、天然歯がもつオパール層のそれとは実際のところかけ離れている。 シングルセントラルの補綴装置をモノリシックデザインのジルコニアで製作し、隣在天然歯の色調や特徴に近い状態の結果を獲得できることもあるが、筆者の経験上、それは隣在天然歯の色調的特徴が選択したジルコニアのそれにたまたまに近似していたからに過ぎず、この製作法はどの天然歯に対しても対応可能で、最適な結果を出せるものではないであろうと考える。 しかしながら、複雑・慎重な色調回復をする必要がないケース、たとえば上顎6前歯やそれよりも大きなケースとなる場合において、何よりも補綴装置の強度を最優先する場合にはモノリシックレストレーションの優位性が発揮される。Part1-2唇側面のカットバック量×ジルコニア舌側バッキングのデザインの組み合わせによるクラウンの設計陶材前装の有無や厚みから考えるジルコニアレストレーションの分類と適応症
元のページ ../index.html#2