図3図4矯正歯科治療とそれによって引き起こされる歯根吸収についての文献的考察タイプ101234タイプ2タイプ3タイプ4L:歯根唇側の限界A:歯根の根尖限界Li:歯根の舌側面で歯根吸収の開始する場所臨床家のための矯正YEARBOOK 2021タイプ5タイプ6133図1 歯根吸収の進行程度(参考文献7より引用改変).1度:根輪郭不規則,2度:2mm以下の根吸収,3度:2mmから歯根1/3まで,4度:歯根1/3以上の吸収.図2 歯根吸収の分類(参考文献8より引用改変).図3 デンタルエックス線写真でみた中切歯の吸収度3~4の歯根吸収.図4 図3をCBCTで立体的にみた複雑な吸収像(歯根の吸収過程をより鮮明に示している).矯正歯科治療による歯根吸収に関する過去の多数の研究結果から方法もさらに具体的に3Dで解明され,図2のごとく根尖の吸収は,タイプ1~6までに分類されている(Camposら,2013)8.タイプ1:水平根尖吸収タイプ2:舌側根表面の吸収をともなう水平根尖吸収タイプ3:唇側根表面の吸収をともなう水平根尖吸収タイプ4:唇舌側両表面の吸収をともなう根尖吸収タイプ5:唇側から舌側方向への根尖吸収タイプ6:舌側から唇側方向への根尖吸収 たとえば,デンタルエックス線写真でみた中切歯の吸収度3~4の歯根吸収(図3)をCBCTでみると,より立体的に複雑な吸収像タイプ4(図4)を呈していることがわかる. ここで,矯正治療中に生じる歯根吸収に関する多くの調査研究を行った中から比較的に新しく,しかも項目ごとに整理されたWeltmanらの論文9を中心に,日常の矯正歯科治療に役立つと思われる事項を私見も加えて記載してみたいと思う.1.固定式矯正装置で間歇的に矯正力を加えるのと持続的に矯正力を加えるのでは生じる歯根吸収は異なるか? Acarらの研究10によると,100grの矯正力を間歇的に(日に12時間矯正用ゴムで加える)使用したのと24時間連続的にゴムを使用したのでは持続的に矯正力を加える方が間歇的に使用した方に比べて有意に歯根吸収がみられたという.2.可撤式熱可塑性(プラスティック)装置と固定式矯正装置 Barbagalloらの研究11によると,固定式矯正装置
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