臨床家のための矯正 YEARBOOK 2021
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亀田 晃特別企画臨床家のための矯正YEARBOOK 2021132Akira Kameda日本ベッグ矯正歯科学会理事長連絡先:〒113‐0022 東京都文京区千駄木3‐22‐11-901・902A Systematic Review of Root Resorption Associated with Orthodontic Treatmentはじめに歯根吸収の最近の分類について 矯正歯科治療における歯根吸収はある程度は避けられない. しかし,適正な矯正力による,適正な歯の移動により生じる小さな歯根吸収は,吸収がセメント質に限局されているため,すぐさま細胞性セメント質により修復され,新しいセメント質層に歯根膜線維が取り込まれて歯は正常な機能を保つようになる. 矯正歯科治療上問題となる歯根吸収は,従来から多くの研究者から言われてきた,いわゆる矯正歯科治療による副作用1,たとえば,①矯正歯科治療により引き起こされる余分な骨吸収と骨量の減少,②矯正歯科治療により引き起こされる歯根吸収,③矯正歯科治療により引き起こされる歯肉の退縮・歯根の露出,④矯正歯科治療により引き起こされるブラックトライアングルの発生,⑤矯正歯科治療により引き起こされる機能の低下,⑥矯正歯科治療による老け顔のひとつであり,歯の移動の際に患者の治療前からもつ生物学的構造状態(矯正歯科学的インナービューティ)を十分に理解せずに,歯根を海綿骨の溝を超えて皮質骨にあたり歯根吸収が生じ,吸収が象牙質まで及び,移動される歯とその機能の安全性にとって有害とみなされる広範囲な歯根吸収である. 米国においても矯正歯科医の信頼を揺るがす最大で最多のトラブルとして矯正治療中に生じるかあるいは悪化させる歯周関連の問題(歯根吸収,歯肉退縮:リセッション,ブラックトライアングル,過度の骨吸収)が訴訟の対象として挙がってきているという(米国責任賠償保険担当責任者の話;Kokichi YG,2011 April).日本においても矯正歯科治療中後に生じるブラックトライアングルの問題を中心として最近は同様の傾向がある2~6. 歴史的文献的に矯正歯科治療上歯根吸収が問題となる場合,①長期にわたる前歯の傾斜移動,②臼歯の遠心移動,③歯根面積の小さな歯の長期にわたる連続的歯体移動,④圧下移動(とくに切歯),⑤トルクによる移動(とくに切歯根の舌側への移動)であるという. まず,歯根吸収の最近の分類法について紹介解説するとともに,紙面の許す範囲で矯正歯科治療にともなって生じる歯根吸収に関して多くの研究論文の中から日常臨床に役立ちそうな事項をピックアップして私見も含めて記載したい. デンタルエックス線写真やセファログラムによる歯根吸収に関する分類は,Levanderら7研究によると,図1のごとくであり,またこれは歯根吸収の進行程度を示すものとしても日常臨床で使用されてきている. しかし,CBCTが矯正歯科治療の診断や治療方法の評価手段として普及し始めると,歯根吸収の評価矯正歯科治療とそれによって引き起こされる歯根吸収についての文献的考察

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