臨床家のための矯正 YEARBOOK 2021
2/6

拡大と抜歯を併用した叢生症例にみる,適切な形態と機能の改善臨床家のための矯正YEARBOOK 202106537図37~41 保定6年時口腔内写真.38403941図42 保定6年時セファログラム.まとめしようというのもやはり適当ではないと思われる.本症例におけるMFTの時期は,急速拡大後のマルチブラケット治療と並行して行ったが,急速拡大装置は口腔内においてはそのサイズが非常に大きい.そのため,急速拡大装置の装着が舌位によい影響を与えないことを危惧し,急速拡大とMFTの順序について検討することがある.本症例では,動的処置に先駆けてMFTを行うことも検討したが,患者の初診時には第二大臼歯の萌出も済んでおり,上顎急速拡大を早めに行うほうが安心ではないかと考えた.MFT指導後の定着を期待する時期に上顎に大きな装置が入るのもあまりよい影響はないとも思われる.また,形態の変化後のほうがより機能改善が容易である6というのは経験的にも感じることである. MFTとの関連という題目に戻れば,もちろん,一部の症例では術後の安定のためにMFTが必須であることは間違いではない.しかし,術後の歯列がニュートラルゾーンに位置して安定するかどうかは,MFTの指導よりも適切な位置へ歯を動かしたかどうかのほうが,はるかに影響が大きい. 最後に顎骨や形態の変化を期待してMFTを行うことについて触れておきたい. 本症例では,低位舌の所見を認め,骨格性下顎前突,上顎の狭窄やガミースマイルの傾向を示した.また,いわゆるハイアングルケースであったため,低位舌の改善は成長コントロールにつながるのではという期待をしていた.本症例での先述の特徴のう

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る