臨床家のための矯正 YEARBOOK 2021
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特集 成長期の叢生を考える 第Ⅰ部 スタディグループによる症例提示臨床家のための矯正YEARBOOK 2021062121514図12~16 マルチブラケット装置開始時口腔内写真.図11 急速拡大装置セット時口腔内写真.1316(図12~16).さらに2か月ほど経過し,治療に慣れてきたことでMFTを開始した.MFTについてはとくに訓練をピックアップせず,当院で通常使用しているテキストブック2に準じて行った. 動的治療期間は2年8か月(マルチブラケット装置装着期間は2年0か月)となった.治療結果:動的治療終了時(図17~26)ならびに保定2年時(図27~36)を参照.症例の考察 本症例は,叢生がシビアなケースではあったが,上顎の拡大と上下左右の小臼歯抜歯により,叢生の改善と良好な咬合を獲得,良好な予後を確認できた.上顎の拡大については,必要な拡大量よりも多めを想定し,装置の拡大量として7.65mmを設定して実施した.拡大直後の模型では歯槽基底部は5mm 程拡大したことが確認でき,動的処置終了時の模型では,歯槽基底部で4mm程度の拡大となった. 拡大した上で抜歯も行うという治療に関しては,元々歯冠幅径も大きめの症例であるため,当然の選択と考えている.抜歯を併用することで,歯列に対する筋圧の均衡を保つことができる位置に治療後の歯列を配列ができ,保定開始6年半を経てもほぼ後戻りが認められない良好な予後につながっている(図37~42). セファロトレースの重ね合わせ(図43)や分析値(表1)の変化からもわかるように,本症例では前歯歯軸の改善を行い,容易な口唇閉鎖を達成できたと考えている. 筋の過緊張なく口唇閉鎖が達成できるように歯列を配列することは,MFTの観点からはとても重要であるため,叢生ケースであっても,前歯歯軸の改善が必要であることは多い.そのためには抜歯が必要となるケースは必然的に増加すると考える. 本症例では,治療の経過とともに口唇閉鎖は自然

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