薬 YEARBOOK '21/'22
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➊歯科医師が知っておきたいCOVID-19の基礎知識特集1 歯科医師が知っておきたいCOVID-19の基礎知識Part2COVID-19に対する薬物療法およびワクチン最新情報寺嶋 毅東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科連絡先:〒272-8513 千葉県市川市菅野5-11-13 ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬、免疫を抑制する薬、抗血栓薬に分けられる(表1)。ウイルスが侵入すると、免疫を担う細胞が異物として認識し取り込んで、その情報を伝えたり、感染した細胞を死滅させるなど、さまざまな免疫反応がおきる。この際の反応は時に正常の細胞や組織の傷害を招いたり、臓器の働きを損なってしまうことがある。また、過剰な免疫反応や、血管壁の損傷などが関与し30別冊 the Quintessence特集─歯科医院はCOVID-19感染症にどう備えるべきかはじめに COVID-19を引きおこす病原体はSARS-CoV-2と呼ばれるRNAウイルスである。ウイルスの表面にあるスパイク蛋白が細胞の受容体に結合し、ウイルスが細胞内に侵入する。細胞内でウイルスが複製され、多くの新たなウイルスが細胞外に出ていき、さらに別の細胞に感染し体内で増えていく。治療ではウイルスが細胞内に入る過程を抑制する薬、細胞内で増殖する過程を抑制する薬、過剰な免疫や血栓を抑制する薬などがある。わが国で承認されているワクチンはスパイク蛋白の設計図(遺伝情報)を体内に注入し、体内で合成されたスパイク蛋白に対して免疫を作らせ、スパイク蛋白の働きを抑えることで効果を発揮する。1.薬物療法2.抗ウイルス薬て血栓症を誘発することがある。感染の早期から前半はウイルス増殖の時期であり、病態の後半では過剰な免疫反応が重症化に関与しており、時期や重症度を考慮して治療薬が用いられる(図1)。 レムデシビルはエボラの治療を目的に開発された薬である。ウイルスが細胞内で複製される際に働くRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制する。入院を必要とする肺炎症例において、改善までの期間が15日から10日に短縮されたことが示され1、米国で緊急承認された後、国内では2020年5月に特例承認された。初日に200mg、投与2日目以降は100mgを1日1回点滴静注する。5日間、改善が認められなければ最長10日間まで投与する。腎機能障害(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)、肝機能障害(ALTが基準範囲上限の5倍以上)では投与しないことが望ましく、定期的に検査を行う必要がある。 ファビピラビルは新型インフルエンザの治療薬であるが、COVID-19においてもRNAポリメラーゼ阻害作用がSARS-CoV-2の増殖を抑制することが期待されて効果が検討されてきた。臨床試験においてウイルスの陰性化、解熱するまでの期間が短縮され、2021年6月の時点で承認申請中の段階である。

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