薬 YEARBOOK '21/'22
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臓器非特異的症状(発熱、倦怠感)上気道(咽頭痛、鼻水)運動器(筋肉痛、関節痛)皮膚(発疹)頭部(頭痛)舌、嗅上皮(味覚障害、嗅覚障害)気管支(咳)肺(息切れ、呼吸困難、胸痛)血管(血栓症)消化器(嘔気、下痢、腹痛)感染臓器と進展 COVID-19は基本的にヒトの気道系で増殖するため、主に上気道炎を発症する。さらにウイルスが肺に移行して増殖すれば、肺炎となる。ただし、前述のように新型コロナウイルスはS蛋白を介して図2 COVID-19の各臓器に関連した代表的な症状。COVID-19では主な感染部位である気道や肺に関連した症状が多くみられるが、それ以外にも各種の臓器に影響を及ぼし、さまざまな症状をもたらす。臨床経過 COVID-19の潜伏期間は2~14日間であり、平均約5日間となる。無症状のまま経過する症例も少なくなく、その場合は本人も感染したことを自覚しないまま過ごしていると考えられる。 COVID-19に多くみられる症状として、発熱、咳、咽頭痛、筋肉痛、関節痛、頭痛、胸痛などがある(図2)。これらの症状は感冒などでもみられるため、症状による鑑別は困難である。また、比較的特徴的な症状として味覚障害や嗅覚障害があるが、これらの症状を有していたとしても診断が確定できるわけではない。薬 YEARBOOK '21/'222.COVID-19の病態特集1 歯科医師が知っておきたいCOVID-19の基礎知識子とN蛋白が結合したヌクレオカプシドが存在し、その周囲をエンベロープという殻で取り囲まれている。エンベロープ表面にはS蛋白が存在し、宿主細胞のレセプターであるACE2と結合する(図1)。細胞内にウイルスゲノムが入り込んで複製が始まるが、その際にRNAポリメラーゼが作用する。ACE2は気道や肺の上皮細胞だけでなく、血管内皮細胞や各種臓器で発現している。 新型コロナウイルス以外にコロナウイルスのグループに含まれるのは、4種類の風邪のコロナウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)であり、いずれも呼吸器系の感染を起こす。ACE2に結合するため、ACE2を発現している各臓器に感染しうる。たとえば呼吸器系以外の細胞であっても腸管上皮細胞などでも増殖する。また、血管内皮細胞で増殖した場合は、血管炎を起こし、凝固系の異常も重なって血栓症を発症しやすくなる。全身に感染が進展すれば、炎症も高度となり、サイトカインの過剰産生によりサイトカインストームを引き起こす。25

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