インプラント YEARBOOK 2022
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 1960年に骨結合の概念をもつMachined Surface(以下,MS)が臨床応用された当時は,アバットメントを介し,その上に補綴装置を装着する術式であった.1990年代になり,多くのインプラントシステムが登場し,骨結合の向上を図るためにさまざまなRough Surface(以下,RS)が使用され,インプラントの残存率は飛躍的に向上した.同時に補綴装置もインプラント体に直接セメント固定,もしくはスクリュー固定する術式が多くなった. 一方,インプラント治療の抱える問題の1つとして,術後のインプラント周囲炎が挙げられる.周知のようにインプラント周囲炎は,MSに比較してRSのほうが罹患しやすく1),インプラント治療のジレンマであることは否めない.したがって,術者は動的治療終了時にRSが軟組織に被覆されないように努めなければならない. 本稿ではTRIシステムを通じて,術後のインプラント周囲の骨安定を達成するために,プラットフォームスイッチング(以下,PS)について筆者らな 1990年代に,いわゆるSubmergedタイプ(骨縁下埋入)のインプラント体が口腔内に露出したときに,マイクロギャップの存在によるインプラント周囲の骨のリモデリングの結果,通常第一スレッドまで骨のリモデリングが起きることについて検証がなされた2,3).この結果は,インプラント周囲の生物学的幅径に由来することが知られている. またこの当時,プラットフォームスイッチングではないタイプ(以下,Non-PS)のインプラントが主流であった.インプラント‐アバットメント接合部(Implant-Abutment Junction,以下,IAJ)のマイクロギャップの存在によりIAJ周囲の1.0~1.5mm幅に見られる炎症領域が存在し「アバットメント由来」炎症性細胞浸潤がみられ,その下方には1mmの結合組織が存在したことが明らかとなった4).そのため,Non-PSインプラントでは,第一スレッドまでの骨のリモデリングを許容するために,RSに移行する201201日本口腔インプラント学会,日本補綴歯科学会,米国歯周病学会,米国インプラント学会,ヨーロッパインプラント学会,ヨーロッパ審美学会Affiliate member,5-D Japanファウンダー● はじめに日本歯内療法学会,日本歯周病学会,5-D Japan会員りの文献的考察・臨床例を述べてみたい.● プラットフォームスイッチングの概念とその経緯TRIデンタルインプランツ株式会社株式会社ブレーンベースTRIデンタルインプランツ株式会社船登 彰芳 Akiyoshi Funato石川県金沢市開業:なぎさ歯科クリニック理事長石倉 千尋 Chihiro Ishikura石川県金沢市:なぎさ歯科クリニック副院長コニカルシールタイプのプラットフォームスイッチング機構を有するTRI VENTの特徴―Stable boneを目指して―

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