やっていい歯科治療注意すべき歯科治療有病者の治療の基本的な戦略循環器系疾患の患者脳血管・血液疾患の代謝性疾患の患者患者精神病などの患者空腹時血糖値妊婦などそのほかの有病者59CHAPTER 4 代謝性疾患の患者【空腹時血糖値および食後2時間後血糖値の判定基準】(mg/dL)126110100(正常型値)正常型図2 血糖コントロールの判定基準.糖尿病型境界型140200食後2時間後血糖値(mg/dL)図3 HbA1c の目標値.目 標HbA1c(%)6.0未満コントロール目標値血糖正常化を目指す際の目標合併症予防のための目標治療強化が困難な際の目標1.細小血管症①糖尿病網膜症:網膜の毛細血管が詰まったり破れたりして,酸素や栄養が届かなくなり,視力が低下する病気です.②糖尿病腎症:腎臓の糸球体における細かな血管の破綻による腎機能の低下により,さまざまな症状・合併症が起こります.さらに機能低下が進行して末期腎不全に至ると,透析療法が必要になることがあります.透析患者の原因疾患のうち糖尿病腎症がもっとも多いです.③糖尿病神経障害:初期には立ちくらみ(起立性低血圧)や手足の痺れなどの感覚異常が出現し,徐々に感覚が失われて足の壊死など重篤な事態を招くこともあります.2.大血管症①心臓の血管の障害:心臓の筋肉への血流が少なくなるために起こります.冠動脈の病気(心筋虚血=狭心症,心筋梗塞).②脳血管障害:脳に栄養を送る血管に生じた障害.脳梗塞,脳出血など.③末梢動脈の病気:手や足の血管の動脈硬化が進行し,【治療禁忌の条件・数値】●糖尿病と歯周病は相互に関係があるため,歯周病によって血糖コントロールが改善しにくい場合もあるため,歯周治療と患者自身によるケアにより,糖尿病と歯周病双方の改善を図ることがとても重要です3.(1)血液データ●HbA1cの値は7.0%未満,空腹時血糖は126mg/dL未【歯科治療における絶対的禁忌】●保存治療(とくに歯周治療)は糖尿病を改善する可能性があるため,内科主治医と連携をとり積極的に行7.0未満8.0未満血管が狭く細くなった状態.冷感,痺れ,間欠性跛行(かんけつせいはこう),安静時疼痛,潰瘍,壊疽.3.骨粗鬆症,その他(2) 服薬状況●糖尿病合併症(動脈硬化性疾患)のため,抗血小板薬,抗凝固薬を服用している場合があります.とくに,抗凝固薬(ワルファリン)を服用している場合は,PT-INRの数値を確認するのが必要です.一般的には歯周外科・抜歯などの観血的処置の場合であっても,脳梗塞や心筋梗塞発作の出現を防ぐため,PT-INRが3.0以下(高齢者は2.6以下)であれば,抗凝固薬を休薬・減量すべきでないとの見解が推奨されています2.●また,糖尿病患者は骨粗鬆症を合併することが多く,その治療・予防薬として顎骨壊死を惹起する薬剤が投与されている可能性があることも考慮する必要性もあると思われます.いずれにしても患者の病態・状態,処置内容,局所の状態などを考慮して慎重に服薬の維持・減量・休薬を主治医と慎重に検討すべきです.満,食後2時間後血糖値は200mg/dL未満を維持できれば,合併症の発症や進展を予防できると考えられます.①血糖コントロールの判定基準(図2)【空腹時血糖値】 目標値126mg/dL未満【食後血糖値】 目標値200mg/dL未満②HbA1cの目標値(図3)【HbA1c】 目標値7.0%未満(※1~2か月前の検査)う必要があります.しかし観血的処置では,糖尿病患者の40~60%が高血圧症を併発しているため,処置中・後の血圧の変動を考慮する必要があります.
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