やっていい歯科治療注意すべき歯科治療有病者の治療の基本的な戦略循環器系疾患の患者脳血管・血液疾患の代謝性疾患の患者患者精神病などの患者妊婦などそのほかの有病者584-1 糖尿病微小血管症網膜症腎症神経障害図1 主な糖尿病性合併症.新垣敬一(沖縄県立中部病院歯科口腔外科)大血管症脳梗塞心臓:狭心症・心筋梗塞末梢動脈症患足病変4-1糖尿病超速でわかる糖尿病【避けたいこと】 ①術後感染 ②創傷治癒不全 ③後出血 ④低血糖(血糖値の変動),Sick day予防対策【知りたいこと】 ①血糖コントロールの状態 ②糖尿【問診のポイント】●どのような治療は受けているか? 食事療法のみ,飲薬,インスリン治療など.お薬手帳を参照●糖尿病合併症の有無 【この疾患の解説】●糖尿病は,糖をエネルギーに変換するインスリンが十分に働かないために血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です.血糖の濃度(血糖値)が高いままで放置されると,血管が傷つき,将来的に心臓病や失明,腎不全,足の切断といったより重い病気に繋がる可能性があります.成因は1型糖尿病と2型糖尿病に大きく分類され,1型はインスリン分泌が少ない,あるいは無くなることによって起こります.一方,2型糖尿病は遺伝的な体質(インスリン分泌低下,インスリン抵抗性)に過食,運動不足,肥満が加わることにより,血糖値の調整ができない状態で起こります.その他の糖尿病1としてステロイド服用や妊娠中にも同様の病態となることがあります.●糖尿病の歯科治療への影響は,一般的にコントロールが悪いと,傷口が治りにくく,術後感染や毛細血管の微弱化,破綻による異常出血を併発しやすいことがよく知られています.またステロイドの長期服用によるステロイド糖尿病は,易感染性の長期化により顎骨壊死(ARONJ)の発症リスクも高くなります.歯科治療(う蝕や歯周疾患の急性化,不適合義歯など)によって食事をとることが難しい場合や,炎症が強い場合などは,血糖値が大きく上下に変動し,低血糖,Sick day(体調の悪い日.糖尿病患者が感染症にかかり,発熱,下痢,嘔吐など食欲不振となり,血糖コントロールが不安定(低血糖)になる状態1)を起こしてしまう危険があります.とくに,イ【決めたいこと】 ①保存処置(歯周治療),外科処置(抜歯,インプラント手術など)を中止するか? ②術前投与の必要性の有無病合併症 ③服薬状況 ④インスリン投与の有無●合併症の治療・予防薬のチェック,骨粗鬆症治療薬服用の有無●糖尿病主治医の確認(通院している病院名)ンスリン製剤を使用している患者は注意が必要です.現在の糖尿病の状態(合併症の有無)や薬の使用方法や体調管理などを内科主治医に相談できるように,治療開始前に十分に医療面接を行うとともに,医療連携体制を整えておくことがポイントです1.(1)主な糖尿病性合併症(図1)●糖尿病による動脈硬化が長時間進むと,血管とそれにつながる臓器が障害され,さまざまな合併症(慢性合併症)が生じます.主に合併症は2つに分類されます.
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