歯を抜歯することで歯槽骨は宿命的にそのボリュームを減少させる1,2).このことは必然的に起こる事象であり,歯を失った歯槽突起は減少し,遺伝的な支配を受けた形態へと向かう.この現象を確実に抑制することはできない.しかしながら欠損部における補綴的な理由,あるいはインプラント治療の難易度を軽減させる観点からこの減少幅を可及的に抑えることができれば,追加的な骨造成が不要もしくは軽減させることができる.また,歯肉退縮を減少させることで審美性の向上に寄与することができる3). 本稿ではリフィット デンタル4〜10)を使用した抜歯窩の温存の成果とその術式,臨床結果,特徴的な骨再生などについて報告したい. 抜歯によるボリュームの喪失を減少させることで審美性の低下,インプラント治療時の介入度合いをある程度減少させることができる.インプラント治療においては治療期間の短縮,手術回数の減少の点において抜歯後即時インプラント埋入は優れており,初期固定の達成やインプラント埋入後の頬側方向のスペース保持などに注意しながら日常のインプラント臨床において頻用される.しかしながら抜歯部位の持続的な炎症の存在,また長期間にわたる炎症の結果としての骨吸収はしばしば即時埋入を困難にさせる11).また,そもそも抜歯適応となった歯の位置が理想的な位置であるとは限らず,このことが抜歯直後に行うドリリング操作をしばしば困惑させる.とくに重度の進行した歯周病罹患歯では病的な位置移動をきたしていることも多い12).このような症例においては抜歯後直ちにインプラントを埋入せずに温存術を行うことで,埋入術式がシンプルで,かつ短時間で,そして望ましい位置に容易に埋入しやすくなることを経験する.歯槽堤保存術(alveolar ridge preservation:ARP)は,抜歯後の歯槽堤の吸収を抑制するための術式として,まずはポンティック部の形態を維持するために行われてきた13).その後インプラント手術予定部位の骨吸収を抑制するための術式として応用されるようになった.抜歯窩に骨移Clinic Report 101Clinical Report 101リフィット® デンタル はじめに 抜歯部位の歯槽堤の保存の意義と目的1985年 九州大学歯学部卒業近未来オステオインプラント学会会長・指導医,日本歯周病学会指導医・専門医,日本顎咬合学会指導医,日本臨床歯周病学会認定医,京セラメディカルインストラクター,スタディグループJUC名誉会長 他水上哲也 Mizukami, Tetsuya医療法人水上歯科クリニック 理事長 医学博士九州大学歯学部 臨床教授Clinical Reportナノテクノロジーから生まれた画期的な骨再生材料『リフィット デンタル』ーその臨床結果と特徴について
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