上顎骨格性の側方欠損を治療する方法として,上顎を拡大する顎整形力の使用は,150年以上前にAngellによって初めて報告された1.それ以来,このような歯の移動が歯周組織に及ぼす潜在的な悪影響について懸念されてきた.これらの影響は,技術,年齢,そしておそらく生物学的な表現型に依存すると考えられる.これらの影響のなかでもっともよく報告されているのは,歯根吸収,頬側歯槽堤の高さと厚さの喪失,頬側歯肉縁の根尖移動,歯の傾き,口蓋骨の厚みの増加である. 本CHAPTERでは,異なる年齢層で使用されるさまざまな技術の歯周組織への影響を概説し,急速拡大(RPE)の歯周組織への影響に関する現在の理解をまとめた.加えて,現在の論争を明確にするのに役立ち,将来の研究の方向性を示唆している.Andrew DentinoT. Gerard BradleyCHAPTER 8口蓋の拡大に使用される装置 ハイラックス拡大装置(図8-1)は完全に歯支持型の拡大装置であり,図8-2に示すハス拡大装置は歯と口蓋組織の両方を介して力をかける装置である.ハス拡大装置は,思春期前や思春期初期の患者に対して,単純な歯の傾きよりも骨格性の変化を得ることを試みる方法として開発された.両装置ともジャックスクリュー(jack screw)を用い,ジャックスクリューを回転させる頻度に応じて,急速または半急速で安定した拡大矯正歯科治療と顎整形力における 歯周組織への配慮
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