ESAACAEFC30 µmDに応じて,4種類のセメント質として説明される.それらは,無細胞無線維性セメント質(acellular afibrillar cementum:AAC),無細胞外来線維性セメント質(acellular extrinsic fiber cementum:AEFC),有細胞混合重層性セメント質(cellular mixed stratified cementum:CMSC),および有細胞固有線維性セメント質(cellular intrinsic fiber cementum:CIFC)である3(図6-1).これらにはさまざまな機能,歯根表面の位置,形成速度,生化学的組成および石灰化の程度があり,歯の種類,患者の年齢およびその他の個人差に応じて異なった分布をしている(表6-1). セメント質は,歯の一生を通じて厚くなり,生理的リモデリングを受けない.セメント質のさまざまな形態は,異なる肥厚の速度を有している.歯周再生治療にとってCIFCより望ましいと思われるAEFC図6-1 セメント-エナメル境(CEJ)と無細胞無線維性セメント質(AAC)と無細胞外来線維性セメント質(AEFC)を頂点とした無細胞無線維性セメント質(AAC)の顕微鏡像.D:象牙質,ES:エナメル質のスペース(トルイジンブルー染色).(Bosshardtの許可を得て転載).は非常にゆっくりと成長し(2〜5μm/年),対してCIFCは30倍速く成長し(動物実験モデル),歯根欠損部へ点状にすばやく沈着する1,2.70CHAPTER 6: 矯正患者における歯肉退縮の疫学と治療歯根膜 歯根膜は,血管が豊富で神経支配を受け,さまざまなタイプの細胞が豊富な結合組織である.歯根膜は歯を取り囲み,歯根セメント質と隣接する歯槽骨(図6-2)をつないでいる.歯根膜は,歯肉の固有層と歯髄との間で,歯冠側から歯槽頂に続く.砂時計の形をしており,幅はほぼ0.25mmで,歯根の1/3のうち中央部がもっとも細く(範囲0.2〜0.4 mm),加齢により細くなる. 歯根膜は緩衝材として機能し,咀嚼または他の歯の接触中に咬合力を吸収し,これらを歯槽骨に分散させる.それは歯の周囲にある骨への付着において重要な役割を果たし,主に歯根膜の幅,高さおよび質に影響され,歯の移動に必須である1〜3. 歯根膜には,線維芽細胞,セメント芽細胞,骨芽細胞,破骨細胞,単球,マクロファージ,マラッセ上皮遺残,未分化間葉前駆細胞,幹細胞など,さまざまな種類の細胞が存在することから,歯根膜は石灰化組織を形成する細胞貯蔵器官としても機能し,創傷治癒や再生に重要な役割を果たしている. これらの細胞は,コラーゲン線維と非コラーゲン性タンパク質を含む細胞外マトリックスに埋め込まれている.さらに,多数の血管,神経線維,細胞が線維の間に認められる.マラッセ上皮遺残(またはヘルトヴィヒ上皮鞘の遺残)の上皮細胞は歯根を一定の距離で取り囲み,歯周組織の恒常性維持および修復に関与すると推測されている. 線維芽細胞はコラーゲン線維に沿って並んでおり,細胞外マトリックス内での合成と再構築(すなわち劣化)に関与している1〜3. コラーゲン線維は,歯根のセメント質と骨の間に三次元的に並んだ束になっている.これらの線維はシャーピー線維とともに歯根セメント質と骨内に接続し,骨と歯根表面レベルでのリモデリング活性に従って数が異なる.線維の一部はオキシタラン線維と呼ばれ,セメント質に入り込み歯根に平行に走る3.
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