矯正YEARBOOK2023
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■外傷の既往■栄養状態■構造的強さ■性差 (女性に多い)■性差 (女性に多い)■年齢 (10代後半〜20代)■全身疾患(自己免疫)■ホルモンバランス (性ホルモン)メカニカルストレス■習癖・生活習慣■咬合■精神的ストレス 時間と力の大きさメカニカルストレス  ■不良な咬合治療   (矯正・補綴)  ■顎関節内障  ■悪習癖  ■外傷  ■不安定な咬合   大きさと期間顎関節への負荷ホストの適応能力がある1. 下顎頭形態変化2. 下顎枝の高さは維持3. 大人:咬合は安定4. 成長期:正常な成長ホストの適応能力が減少機能的骨改造1. 下顎頭形態変化2. 下顎枝の長さの減少3. 大人:進行性下顎骨後退4. 成長期:成長量の減少骨吸収をともなう異常な骨改造ホストの適応性ホスト耐性矯正歯科治療中に顎関節症が発症した場合の対応臨床家のための矯正YEARBOOK 2023139図1 顎関節症の要因(咀嚼の平衡機構)(参考文献1より引用改変).図3 進行性下顎頭吸収の要因(参考文献2より引用改変).図2 進行性下顎頭吸収メカニズム(参考文献2より引用改変).変化については,Arnettら2,3によって進行性下顎頭吸収として,若年者では下顎骨成長の減少,大人では成長終了後の下顎骨の後退が生じ,これらの変化は下顎頭の変形,大きさの減少,下顎枝の高さの減少をともないながら下顎骨が後方回転し,関連症状として機能的な筋肉や関節の痛み,開口障害,下顎骨の成長制限などが挙げられている. その要因としてホストの顎関節部の適応能力が減少している状態,あるいは正常機能を越えた力が顎関節部に加わった場合などが考えられている(図2).ホストの要因としては,年齢,全身疾患,ホルモンバランス,妊娠にともなうエストロゲン分泌,メカニカルストレスの要因としては,咬合治療, 非復位性関節円板前方転位,悪習癖,外傷,不安定な咬合およびこれらの因子の大きさ,期間などが挙げられている(図3). そこで,筆者は,進行性下顎頭吸収および変形性顎関節症を含めた下顎頭吸収について,下顎頭骨変化のリスク因子を研究した(図4). 初診時の矯正歯科患者で,図4で挙げたリスク因子の中で,いくつかの項目が重なった場合,下顎頭形態の診査を慎重に行うべきと考えている. たとえば,10代前半女性で,パノラマエックス線写真で下顎頭が小さく,下顎が後退し,大きな咬頭嵌合位から最後退位へのスライドを示し,関節雑音がみられた場合には,開口障害,痛みなどの症状がみられない場合でも下顎頭吸収のリスクが高いことから,MRIなどで下顎頭骨変化の病態所見について確認する必要があると考えている.

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