富山県勤務 あすなろ小児歯科医院矯正歯科連絡先:〒930‐0032 富山県富山市栄町3丁目1‐15What to do if TMJ Develops during Orthodontic TreatmentKazuhiro Yamada山田一尋特別企画臨床家のための矯正YEARBOOK 2023138 顎関節症は,ホストの要因とメカニカルストレスのバランスが崩れた場合に発症すると考えられている(図1)1.咬合は,昔ほど大きな要因とは考えられていないが,メカニカルストレスの要因の1つとして考えられている.矯正歯科治療は,要因の1つである咬合を変化させ,顎関節症の発症時期である10代に治療開始することが多いことから,治療開始前の顎関節,筋肉の状態を十分診査することが重要である. 初診時に,顎関節あるいは筋肉の痛み,開口障害が認められた場合には,カウンセリング,スプリント療法,薬物療法,理学療法など,非侵襲的対症(可逆的)療法で顎関節症の初期治療を行う.矯正歯科治療は痛み,開口障害が消退後に行うべきである.関節雑音については残存する場合が多く,関節雑音自体は生体の一種の適応反応であり,顎関節部に負荷が加わらなければ,機能異常は生じないことを治療前に患者に伝えることが必要である. また,矯正歯科治療は基本的には歯並び,咀嚼障害,顔貌などの主訴がある患者に対して行うべきである.主訴が顎関節症の改善である場合には,顎関節症の可逆的治療を行う.例外として,可逆的治療後も顎関節症状が再発し,咬合因子(交叉咬合など)が明らかに顎関節症の発症に関連していると考えられる場合に行うべきである. 矯正歯科治療中に顎関節症の発症した場合,顎関節症の発症時期が10代で,矯正歯科治療の開始時期と重なっていることから,歯の移動後の咬合要因あるいは顎関節症発症の多因子要因が関連しているのか,その見極めが重要になってくる.また,矯正歯科治療中の咬合要因がメカニカルストレスとして加わる場合も,男性と女性では構造的に強さが異なってくる点を考慮する必要がある. 矯正歯科治療中の咬合要因として考えられるのは,①第二大臼歯の萌出後の咬合干渉②前歯後退時の下顎骨の後方偏位③ヘッドギアによる臼歯部咬合接触の変化などが挙げられる. このような場合,これらの干渉を解除あるいは装置の使用中止を行うとともに,顎関節症の多因子(習癖,生活習慣など)の再確認を行い,セルフケアを行うことが重要である. 下顎骨が進行性に後退する進行性下顎頭吸収の症例が報告されている.このような下顎頭の異常形態はじめに初診時の対応矯正歯科治療中の顎関節症発症に対する対応進行性下顎頭吸収矯正歯科治療中に顎関節症が発症した場合の対応
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