OJ20thミーティング抄録集
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審美インプラント治療におけるジレンマ 「審美インプラント治療」といわれるように、審美領域におけるインプラント治療には、当然、一定の審美的結果が求められるが、天然歯とは異なる解剖学的、組織学的構造をもつインプラントを用いて審美性を獲得するには限界があることを、まず認識する必要がある。 天然歯では、その精微な解剖学的、組織学的構造から必要最小限の組織量で絶妙なバランスを保ちながら、調和の取れた自然美を呈している(図1)が、インプラントでは、天然歯よりも周囲の硬・軟組織を大きく増大して、組織の生体恒常性を維持し、形態を成型、安定させる必要があるため、インプラント周囲組織の審美性と清掃性の両立を図ることが難しくなる場合がある。 もちろん、インプラントにおいても、できれば天然歯と見紛うほどの審美性を表現したいが、限界を無視し、審美性の追求に傾注するあまりに清掃性を犠牲にしてしまうと、長期的予後を望むことは難しくなるだろう。審美性と清掃性の両立というジレンマをいかに解決するかが、審美インプラント治療を長期的安定に導く鍵といえる。 はじめに 審美領域へのインプラント治療が普及してから20余年が経過した。その間、多くの基礎的、臨床的研究により得られたさまざまな知見をもとに、審美インプラント治療を成功に導くためのルールが整理され、審美インプラント治療は予知性の高い治療になったといえる。しかし、10年を超える長期結果の報告は決して多いとはいえず、今後の研究成果に期待するところである。 本稿では、おもに審美インプラント治療の長期的予後にフォーカスを当てながら、人生100年時代を迎えようとしている長寿社会において、患者の人生を有益にするためのDental Life Planningについて考えてみたい。  ここで簡単に審美インプラント治療を成功に導くためのルールについて、まとめておきたい。まず、インプラント周囲組織の維持、安定を図るための条件を以下に示す(図2)1。図1 天然歯は精微な硬・軟組織の解剖学的、組織学的構造から必要最小限の組織量で絶妙なバランスを保ちながら、調和の取れた自然美を呈している(₃~₃オールセラミック修復、₂ポンティック)。68略歴1995年 大阪大学歯学部卒業、医療法人貴和会歯科診療所勤務2008年 医療法人貴和会理事、貴和会新大阪歯科診療所院長2019年 医療法人貴和会理事長    JIADS理事・講師、東京医科歯科大学歯学部非常勤講師、長崎大学歯学部非常勤講師、    AAP、AAFP、日本臨床歯周病学会理事・指導医、日本歯周病学会、    日本口腔インプラント学会長期的観点から審美インプラント治療を再考する審美インプラント治療を成功に導くためのルール佐々木 猛Takeshi Sasaki大阪府開業シンポジウム3

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