はじめに 日本における歯の喪失原因の第1位は歯周病である。インプラント治療を希望する患者の半分近くが歯周病だと考えることができる。ゆえに、歯周病患者にインプラント治療を行う場合、歯周病に対する対策が必要である。つまり、残存歯の歯周病学的環境整備やインプラント周囲炎の予防法・治療法の習得が不可欠である。 本稿では今回の講演の内容から、①歯周再生療法の進歩による天然歯保存の可能性の拡大、②インプラントの隣在歯の歯周再生療法、③インプラント周囲組織の長期的安定、の3項目を要約し、歯周病患者における天然歯とインプラントの長期的な共存について考察する。 エナメルマトリックスデリバティブ(以下、EMD)の臨床応用が始まって20年以上が経過し、多くの研究や臨床報告によってその適応症は拡大し、成功率も高いものになってきた。2011年に発表されたCortelliniらの論文1では、「ホープレスと診断された歯をあえてEMDによる治療で保存を試みた」臨床研究において、5年生存率は92%(25本中2本のみ抜歯)と報告されている。この研究においては、EMDで治療したグループと抜歯して補綴したグループ(インプラント、ブリッジ)との比較を行っているが、その成功率にほとんど差はない。つまり、「歯周再生療法を成功させる条件が整っている場合、従12患者年齢および性別:29歳、女性主訴:他院で重度歯周炎と診断され、紹介来院。図1-a 術前のCBCT画像。₇に根尖を超える骨吸収を認めた。図1-b 術後10年のCBCT画像。EMD+骨移植+吸収性膜を用いた治療で10年後も良好な状態を維持している。略歴1983年 岐阜歯科大学(現・朝日大学)歯学部卒業1986年 宮本歯科医院開院2000年 四条烏丸ペリオ・インプラントセンター移転開業(現・四条烏丸歯科クリニック)2007年~現在 朝日大学歯学部客員教授2008年~2012年 JIADS理事長2011年~2012年 日本臨床歯周病学会理事長 日本歯周病学会歯周病専門医、日本臨床歯周病学会、米国歯周病学会ab歯周病患者における天然歯とインプラントの長期的な共存1.歯周再生療法の進歩による 天然歯保存の可能性の拡大症例1:他院でホープレスと診断され、インプラント治療のために紹介されたケース宮本泰和Yasukazu Miyamoto京都府開業初期会長講演
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