2023年1月 119 前回の「プレオルソで治す 歯ならび&口呼吸 子どもにやさしいマウスピース型矯正装置」は、治療開始前の患者さんへの説明だけでなく、小児矯正治療の適応症を把握するうえで大変参考になる書籍でありました。しかし一方で、実際の臨床では上手くいかないこともあり、対処法に困っているという事例も耳にするようになりました。そこで、この問題を解決するためにプレオルソ治療の長期経過とリカバリー方法をまとめたのが本書です。すべての小児矯正治療に携わる歯科医師に向けた超実践的な症例集といえます。 まず、すべての症例で混合歯列前期から永久歯列期までの治療経過写真が掲載されていることが特徴です。写真は患者さんへの説明だけではなく、矯正治療の効果を評価する大切な資料でもあります。執筆者の先生方は定期的に口腔内写真を撮影し、時系列で保存してあるため治療経過が非常にわかりやすくまとめられています。子どもの歯列と咬合の変化は速く、あらためて継続的な資料採取の重要さを再確認しました。次に、今回は臨床でよくあるさまざまなトラブルのリカバリーが掲載されています。すべての子どもをプレオルソのみで治療することはできません。思うような治療効果が出ない場合は、患者さんはもちろん、担当医も粘り強く治療に向き合っていく必要があります。このような内容は、時には自分の失敗をさらけ出すことになるため、勇気がいることです。執筆者の先生方には頭が下がる思いであります。 本書をまとめるにあたって、私自身も開業から10年間のプレオルソ治療を見直すよい機会となりました。プレオルソ治療の長期経過をみると、まだまだ臨床家として未熟であることを痛感させられますが、今後も適切な小児矯正治療ができるように研鑽を積みたいと思った次第です。最後に、このような機会を与えてくださった開発者の大塚淳先生ならびにクインテッセンス出版社の皆様に感謝いたします。牧野正志まきの歯列矯正クリニック院長あとがき
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