GPのための矯正歯科臨床ガイドブック
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(図4-1-4).この方法では,牽引量とトルクを調整しやすいため,前歯部の歯軸傾斜をコントロールしながら牽引が行うことができると考えている.一般的によく用いられているパワーチェーンやクローズドコイルを用いたスライディングメカニクスと比べ,歯列全体が山なりにたわむボーイングエフェクトが起こりにくいと考えるため,第一選択としている.単独で移動3バイトシーティングのフェーズにおいては,咬合を緊密化させるため,必要な部位に挺出や圧下を目的としたインセットやオフセット等のベンドを加える.ベンドの位置や種類は画一的なものではなく,その都度必要に応じて調整を行う.歯が移動しやすいよう,ワイヤーサイズを小さいものに変更する場合もある,また歯の移動を促すために,患者の協力を得て顎間ゴム(垂直ゴム,Ⅱ級ゴム,Ⅲ級ゴム)を使用する.前歯部のリトラクション方法は,犬歯を別にリトラクションするか,犬歯を含む複数の歯を一塊として牽引する(エンマスリトラクション)か,歯科医師の考え方によって異なる.筆者は,上顎では犬歯の歯軸傾斜とアンカレッジロスをより確実にコントロールするため,犬歯単独で遠心移動させたのちに4切歯を牽引する.下顎は前歯部の叢生がオープンコイルにより解除されたのち,臼歯部のアンカレッジロス量を多く期待し,両側犬歯間の6前歯を一塊として牽引する方法をとっている(図4-1-5).抜歯スペース閉鎖が完了すると,緊密に咬合させるための調整を行う.各歯の状態に応じて,ワイヤーにベンドを組み込図4-1-6 バイトシーティング時の顎間ゴムの使用上顎は犬歯を単独移動後,両側側切歯間をリトラクションする.下顎は両顎犬歯間を一塊としてリトラクションを行っている.前歯部移動単独で移動一塊(エンマス)で移動図解でわかる! 不正咬合のタイプ別治療アトラスChapter 4前歯部の牽引方法図4-1-5 筆者の行う前歯部の牽引方法んだり,顎間ゴムの使用によって理想的な咬合の確立を目指す(図4-1-6).15122333❸ バイトシーティング(咬合の緊密化)

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