a図1a〜c 1998年当時,上顎第二大臼歯遠心側に骨欠損を認めたため,自家骨と吸収性膜を使用し,再生療法を行った.別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2023」13Diseased periodontium歯根膜細胞骨芽細胞セメント質細胞+結合組織Enamel matrix derivative rh-PDGF, PRPFGF-2 etc歯周組織再生療法の原則成長因子Signaling Molecules細胞Cells足場Scaffolds血液供給Blood Supply自家骨移植同種他家骨移植異種他家骨移植人工材料移植+吸収性膜Regeneration of periodontium症例1 自家骨と吸収性膜で再生療法を行った症例ンは幼若豚の歯胚より抽出されたエナメルマトリックスタンパクを主成分としており,歯周外科の治療後に塗布することにより,上記と同様に歯根膜にある未分化の間葉組織がセメント芽細胞に分化し,無細胞セメント質が再生することを期待するものである.以降,歯科でも再生医学(tissue engineering and regenerative medicine)の概念5が定着した.図2に再生療法の原則を示す. 2000年代当初には,海外ではrh-PDGF(GEM21)の応用6もされ,国内では2017年からFGF-2(リグロス,科研製薬)の臨床応用が始まっている.FGF-2は,塩基性線維芽細胞増殖因子である.In vivoでは,図1d図1e総論 歯周組織再生療法の現在と展望bc図1d,e 21年後(2019年)わずかに骨欠損は認めるものの,状態は安定している.図2 再生療法の原則.歯周組織工学に必要な重要な要素を模式的に示したもの.失われた歯周組織の再建には,細胞,足場,シグナル伝達分子,血液の供給が必要である(参考文献5より改変・引用).FGF-2誘導歯肉上皮細胞の増殖を抑制し,FGF-2誘導歯根膜細胞の増殖を相乗的に増加させる.同様に動物実験でも,上皮のダウングロースが有意に抑制されることが示された.さらに,FGF-2の添加は歯根膜細胞のALPase活性と石灰化結節形成を用量依存的に有意に減少させることがわかった.しかし,FGF-2による歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化抑制効果は可逆的であり,FGF-2刺激を受けた歯根膜細胞をFGF-2非存在下で再培養すると石灰化結節が形成された. つまり,FGF-2は,早期には上皮細胞の増殖を抑制し,歯根膜細胞の増殖,遊走を促進し,後期に
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