1 ⽇常の臨床で急性炎症のために咬合調整もできないような歯に遭遇することがある.このような歯は抜髄を試みても麻酔も奏功せず,髄腔内麻酔をしなければならなかったり,抜髄後,さらに痛みが増し,クレームやつぎの予約は無断キャンセルされるなど,よい結果とはならない.また,無断キャンセル後,数年後に再来院されたときには,う蝕が進⾏していて抜歯に⾄ることもある.反対に,深いう蝕が多数存在しても,痛みを発症することなく,咬合崩壊から数年経過したのち,はじめて来院する患者さんもいる(図1,2). この2⼈の患者さんの違いはどこにあるのだろうか.その答えは咬合による⼒のコントロールである.咬合⼒の強い⼈はう蝕が存在しなくてもわずかなこれが大事!「治療計画・治療順序編 123ページ参照」3.エンド編 「痛くて我慢できないため,何とかしてほしい」.そんな患者さんの要望に応えて抜髄を開始したが,⿇酔も奏功せず,激しい痛みに耐えさせながら治療をした経験がないだろうか? このようなケースは抜髄処置から数週間打診痛が残りクレームになるケースがある.この章ではそのような急性炎症の原因と対処法について説明する.58①患者さんと⻭科医院の関係 (1)炎症が軽度 (2)炎症が重度 (3)上記の2つの対策で炎症がおさまらなかった場合 (4)ブラキシズムとTCH(Tooth Contacting Habit:⻭牙接触癖)(1)炎症が軽度:数日間,経過観察 炎症が軽度の患者さんは⽇を改める.軽度の炎症きっかけで歯髄炎を引き起こす.逆に咬合崩壊している患者さんは当初は痛みがあったが,咬合崩壊により⼝腔周囲筋は衰え,深いう蝕が存在しても痛みが少ない.そのため,最終的には図2のように全顎的に咬合崩壊してはじめて来院する患者さんもいる.痛みを抑えるなら,咬合⼒の強い患者さんであっても咬合させなければ炎症は起きづらい.また,急性炎症のある患歯に咬合調整を⾏ったとしても,それが刺激となり,炎症が増すことになる.明らかに補綴治療が必要なケースでなければ急性炎症が起きた歯に咬合調整を⾏うことはお勧めしない.患者さんと⻭科医院の関係抜髄できないくらい痛い歯の対処方法痛いから抜髄,そこから歯科医師の悩みが始まっている11はじめに
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