日本歯科評論2月号
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山やま田だ 潔きよし  歯周病の病因は,主因子として細菌性プラークと宿主抵抗性,修飾因子に歯石などのプラークリテンションファクターが挙げられる.しかし,主因子であるプラークを十分にコトンロールしても,炎症の改善が見られない症例にしばしば遭遇することがある.それが侵襲性歯周炎(現在ではステージⅢやⅣ・グレードC)や難治性歯周炎である.その背景には,歯周病原細菌の問題のほかに,全身疾患などの影響が考えられる.そのような症例に対して日本では機械的なデブライドメントに抗菌療法を併用して対応している■).症例によっては,上記の対応を行っても治癒反応はさまざまであり,同等の結果を得られないこともある.それが歯周病治療の難しいところである.患者個々の宿主抵抗性の違いは治癒に大きく影響する. 現在,侵襲性歯周炎という診断名は新分類では使われなくなったが,病態そのものがなくなったわけではなく,その特殊性を踏まえた臨床対応が求められることはいうまでもない.今回は,侵襲性歯周炎の中で限局型侵襲性歯周炎およびその予備軍の症例を提示し,その臨床対応について考えてみたい.山田歯科成瀬クリニック〒194-0045 東京都町田市南成瀬1-4-5 診断は2017年米国歯周病学会(AAP)・欧州歯周病連盟(EFP)共催ワークショップでの協議から変わり,慢性歯周炎と侵襲性歯周炎という1999年の分類からステージによる重篤度と喫煙や糖尿病などを配慮したグレードで分類されるようになった■).筆者は,若年性歯周炎,思春期性歯周炎という診断がつく時代から多くの侵襲性歯周炎の症例に携わっていく中で,治療の進め方などから現在のような診断基準になった経緯をある程度納得しているところである(表₁). 侵襲性歯周炎の診断項目には,年齢が10代から発症し,Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a)菌の存在比率が高く,進行の速さ,家族性,免疫応答の異常などがある.限局型は切歯と大臼歯にアタッチメントロスを生じ,全歯数の30%以下,広汎型は第一大臼歯と切歯以外の少なくとも■歯以上にアタッチメントロスを有し,全歯数の30%以上であることが挙げられている■).限局型と広汎型は少し違う症例として扱われている.限局型は歯周症96 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.2(2023-2)診  断臨床の視点から―限局型侵襲性歯周炎の診断と治療戦略―侵襲性歯周炎の臨床対応

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