CAD/CAM冠 CAD/CAMインレー
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末すえ瀬せ一かず彦ひこ 日本の保険診療にこれまで多用されてきた金銀パラジウム合金(金パラ合金)の組成であるパラジウム価格の世界的な高騰による代替材料として「CAD/CAM冠・CAD/CAMインレー」が保険導入されてきたように報じられているが,決してそうではない.確かに以前から金パラ合金の代替材料が模索されてきたが,金属材料の加工では「鋳造」という概念が捨てきれずに,「チタン鋳造冠」がつい最近も保険導入された経緯がある.金属修復物の問題点として「審美的不良」「歯・歯肉の変色」「歯根破折」「金属アレルギー」など,患者に対してとても望ましいとは思えないことばかりが列挙される.金属修復物の長所として「扱いやすさ」「長期的に壊れない」「良好な適合性・形態再現性」などが挙げられるが,いずれも術者である歯科医師や歯科技工士にとっての利点である.保険診療に規定された修復材料としての「国策合金」であるために術者も断腸の思いで金パラ合金の金属冠を装着してきた.上顎小臼歯に「きらりと光る金属冠!」誰が喜ぶであろうか! CAD/CAM冠材料は,日本の高分子化学技術の集大成によって製品化された材料で,2000年当初歯科用CAD/CAMテクノロジーが日本に導入されてきたころから,「切削可能な高分子材料」としてメーカーサイドで高強度・高密度なブロックとして高圧下で加工され,これまでのアナログ的なペースト状の築盛材料とは異なり,完成された修復物の内部は均質で,全く気泡など存在しない安定した材料である. 2014年■月にはCAD/CAM冠のこれまでの臨床試験成績が認められて,中央社会保険医療協議会傘下組織である保険医療材料専門部会において(株)ジーシーの「グラディアブロック」が「区分C2」(新機能・新技術)として医療保険への導入が承認された.新技術や新材料が新しく医療保険に導入される場合には■つのルートがあり(図1),それらのいずれか,あるいは複数のルートを通じて,申請,検討後,最終的に厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会に諮問し,省令発令が行われる.当時は歯科医療界において先進医療「区分C2」での医療保険への導入はきわめて珍しく,「CAD/CAM冠の保険導入」は注目された. 2014年に小臼歯部への保険収載から,第一大臼歯,前歯部へと順調に適用拡大が行われてきた.現在では,条件付きではあるが,前歯から第一大臼歯部までの単独冠はすべて適用可能となっている.パラジウムの供給をロシアに頼っていた金パラ合金の10 THE NIPPON Dental Review Separate Volume, 2023奈良県生駒市 末瀬歯科医院Ⅰ.CAD/CAM冠保険導入の経緯CAD/CAM冠・CAD/CAMインレーの保険収載と臨床活用の現状,そして歯科技工

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