DHが守れる最後のチャンス!インプラント周囲粘膜炎
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周囲粘膜炎かどうかを最終的に診断するのは歯科医師ですが、その診断を仰ぐためには、歯科衛生士の皆さんによるスクリーニングが不可欠です。ここでは、その方法をまとめます。メインテナンスで周囲粘膜炎を見逃さない プロービングは、出血の有無(Bleeding On Probing:BOP)によって歯周組織の炎症状態を知ることができる、手軽でいい方法です。天然歯の場合、ある程度腕に自信のある歯科衛生士さんであれば、プローブ1本で歯周組織の状態は把握できると思います。というのも、天然歯の歯肉縁下の形態を頭に描きながら、歯根に沿ってポケット底部までうまくプローブを挿入できるからです。また、歯肉溝の深さ(Probing Pocket Depth:PPD)が3mm以下であれば健康というはっきりとした基準値が存在するため、歯槽骨の吸収の程度もエックス線写真を撮影せずとも見当をつけることができます。 インプラント周囲組織においても、組織の状態を把握するためにプロービングが非常に有用であることは疑う余地はありませんが、残念ながら、天然歯と同じようにうまくいくわけではありません。それゆえに、「インプラント周囲組織の状態の把握にプロービングは不要」、もしくは「むしろ害になるため行ってはいけない」という意見をよく耳にします。なかには、インプラント周囲溝にエアーを吹き付けて、「エアーで歯肉が開くようであればプロービングをする」という考え方で検査をされている方もいらっしゃいます。 一方で、天然歯のプロービングとインプラントのプロービングをまったく同じものと捉えることも難しいでしょう。したがって、インプラントのプロービングの注意点を念頭に置いたうえで、正しい考え方のもとで実施する必要があります。インプラントの歯肉縁下の形態は、天然歯とぜんぜん違う!注意点1 インプラントにおける天然歯歯根に相当する部分は、多くの場合、インプラント体(フィクスチャーと呼ばれる骨内の部分)とアバットメント(歯肉貫通部分)の2ピース構造になっています(図8)。おおよそ歯の中心部分に位置していることが多いのですが、そうではない場合もあります。さらにやっかいなのはアバットメントで、その形態は十人十色、いえ千差万別と言っても過言ではないバリエーションがあり、天然歯の歯肉縁下の形態とはかけ離れた形状をしていることがほとんどです(図9)。このことから、皆さんがこれまでの経験で培ったプロービングの技術や解剖学の知識が、インプラントにおいてはなかなか発揮しにくいのが実情です。上部構造を装着したままだと、大きな誤差が生じることも!注意点2 プローブを用いてインプラント周囲のPPDを測定する際、上部構造が装着されている場合大きな誤差が生じることがあります。ある文献では、上部構造を装着した状態と、外した状態でのPPDの一致度はわずか24%であり、一致しないものは実際の深さよりもオーバーにもアンダーにも測定されたという報告があります15)。インプラントでもプロービングは不可欠! だけど……インプラントに即したプロービング1DHが守れる最後のチャンス! インプラント周囲粘膜炎14

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