DHが守れる最後のチャンス!インプラント周囲粘膜炎
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 歯周炎と周囲炎について、組織学的な所見をもう少し見ていきましよう。さきほどのLindheら(1992)の研究で、歯周炎発症時の歯周組織、周囲炎発症時のインプラント周囲組織がそれぞれ採取されました5)。とても興味深いことに、歯周炎が存在していても、約1~1.5mmの健康な結合組織によって、ICTは歯槽骨から隔てられていることがわかります(図5a)。一方、周囲炎においては、炎症は骨髄にまで影響 感染に対する抵抗性が弱いことから、周囲炎が急速に進行することを示したエビデンスがあります。Zitzmannら(2004)は、Lindheら(1992)5)と同じように、犬の口腔内で実験的に周囲炎を引き起こし、そこから治療をしないまま1年間の観察を行いました7)。結果、埋入された21本のインプラントのうち、16本のインプラントで骨吸収が認められました(図6)。さらに、2mm以上の骨吸収があった4本のうち、2本のインプラントが完全にオッセオインテグレーションを失い、抜けてしまいました。 このように、たった1年でここまで進行してしまう可能性があることをふまえると、インプラント周囲をしっかりとモニタリングしつづけ、もしも周囲炎の明確な症状を認めたら、早期に介入することが大切だと考えられます。21本中、16本のインプラントで骨吸収が認められた。骨吸収の程度2mm以上1~2mm0~1mm変化なし図5 歯周炎発症時の歯周組織と周囲炎発症時のインプラント周囲組織の違い歯周炎の顕微鏡写真。ICTが形成され、骨吸収が起きていることから、歯周炎はたしかに存在しているが、ICTと歯槽骨頂との間は健康な結合組織で隔てられている。周囲炎の顕微鏡写真。ICTと歯槽骨頂との距離が近く、炎症が骨髄にまで影響を及ぼしているようすがみられる。(図5a、bは文献6より転載、図5cは文献6を参考にした模式図)を及ぼしていることが認められます(図5b)。 先述のとおり、歯周炎と周囲炎には骨吸収をともなうという類似点がありますが、炎症が直接骨まで及ぶかどうかという点では違いがあるのです。この大きな違いは、健康な結合組織と歯根膜の存在によるものだと考えられます(図5c)。このような解剖学的な違いからも、インプラント周囲では感染に対する抵抗性が弱いのではないかと考えられています。(文献7より引用改変)ab歯周組織ではICTがあっても健康な結合組織や歯根膜があるため、炎症が骨に波及することはない。一方、インプラント周囲組織では、ICTが骨に隣り合って存在し、骨に直接炎症が波及する。c健康な結合組織(1~1.5mm)健康な結合組織(1~1.5mm)接合上皮の末端ICTの末端ICTの末端歯槽骨頂歯槽骨頂周囲炎では、炎症が骨まで直接及んでしまう周囲炎では、炎症が短期間で急速に進行する実際のようすがコレ!実際のようすがコレ!歯周炎VS周囲炎歯周炎VS周囲炎図6 1年間で多くのインプラントで骨吸収が生じた(本)024681012インプラントの本数42105このうち、2本のインプラントが喪失!DHが守れる最後のチャンス! インプラント周囲粘膜炎10

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