再根管治療の成功率を高めるスカンジナビアエンド
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4章 再根管治療の非外科的治療76 1章にも書いたように,再感染根管治療の成績は圧倒的に悪い.一般的な再根管治療の場合,以前行われた抜髄の失敗などの,感染根管治療が成功しなかったケースへの対応であるから,未治療根管の治療よりもさらに1段階難易度は上がる.根管の状況によりその成功率は異なるため,それぞれの根管の状況に応じた異なるアプローチを考えるほうが自然である.そして根管の状態が異なる以上,抜髄時と再根管治療時では術式も異なり,疾患の診断(P.25参照)が異なるわけであるから,治療方法も異なると考えた方がよいということは想像に難くない. 2章でも述べたように,診断とは疾患の診断のみならず,その次のステップである治療上の診断(P.44参照)をも含むものである.根管治療に関して言えば,まずは根管治療を行うかどうかの必要度(治療必要度)から考えた診断,そして根管治療を行う方法のオプションとしての診断がある.治療必要度を判断するうえでは術者の能力の問題と患者の価値観,そして成功率を考慮する必要があり,実際の根管の問題だけを考えても結論は出ないことが多い.治療方法を考えるためには,そのケースでは何が問題なのか考えることが第一である.そのうえで,その問題を改善することができるのかどうか考え,治療方法を選択することとなる(表4-1-1).それらを考慮せず一元的に非外科治療を選択したり,外科治療を選択するのでは,その成功率は下がってしまう1). 非外科的根管治療というと普通はクラウンを外し,コアを外し,根管治療を行うというのが定番になっていると思われる.しかしながら,無菌的治療を徹底的に行うためにラバーダムを掛けようとすると,掛けることはできても治療中に外れてしまうなど(図4-1-1),困った症例に出くわすことがしばしばある.さらに,残存歯質のマージンが歯肉縁下であり,ラバーダムを掛けることができないような症例(図4-1-2)や,そうでなくとも歯肉から大出血があり,隔壁を作ろうにも接着が弱く,細菌によるリーケージを回避することが難しい場合(図4-1-3)もある.また特に前歯部では審美的な要求から仮歯を入れておかないと治療にならない場合もある(図4-1-4). ところが,仮歯とはいえ補綴的な治療を先に行っている場合は支台歯形成を行っているため歯が非常に細くなってしまい,根管治療を行ううえで残存歯質がわずかになってしまったり,残存歯質や隔壁,コアが折れてしまったりと,簡単ではない症例無菌治療の難易度無菌治療を始める前に4-1-14章-1

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