最新インプラント補綴-デジタルとアナログの融合-
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正会員コンテストデジタル化時代における顎運動の 重要性─診査・診断3.0甲斐智之 Satoshi Kai (兵庫県、大阪府開業)1992年 長崎大学歯学部卒業1997年 かい歯科医院開業2002年 医療法人翔己会南茨木プラザ歯科開業2007年 医療法人翔己かい矯正歯科インプラントセンター開業日本口腔インプラント学会専門医、AAP会員、CISJ会員、JSCO会員はじめに 一般に、臼歯を喪失し、インプラントを必要とする患者の多くは、左右の咬合バランスが崩れた結果、下顎偏位を生じていることが多い。開口時には顎関節部の運動障害が生じている同側に、下顎が偏位していくケースが一般的ではあるが、反対側に偏位しながら開口するケースもみられる。 このような複雑な下顎偏位を呈する症例において、どのような診査・診断が有効なのであろうか。今回はインプラントが介在している補綴治療にスポットを当てて考察したい。下顎偏位の臨床的分類 歯根膜を欠いているインプラントは、荷重の大きさ、方向を認識する能力は低くなっており、残存組織に対して過大な力をかける可能性がある。したがってインプラント補綴は、天然歯以上に安定した咬頭嵌合位を与え、周囲組織に対して、力を分散することが望ましい1)。 力の分散(=下顎偏位の改善)を考えたとき、下顎骨にどのような力がどの方向に働き、現在の下顎位に至ったのかを分析することが重要である。そのため、CBCTと顎運動解析から得られたデータを元に前頭面と水平面に分けて考察をしている。以下に下顎偏位の臨床的な分類を示す(図1)。 これにより三次元的に複雑な下顎偏位を二次元的に捉え、治療ステップに反映することができる。下顎偏位の診査・診断 図2に示すのはGibbsが示したチューイングサイクルである2)。このような正常な咀嚼運動が可能であるためには、適正下顎位で咬頭嵌合していることが望ましい。 実際に顎運動解析機器からの正常な咀嚼運動を観察すると、下顎頭の運動軌跡が一定のリズムで作動していることがわかる。 しかし、下顎偏位が生じ、顎関節部に運動障害がある場合、一定のリズムはなく不規則なものとなる。顎機能運動から適正下顎位を考察するとき、複雑な回転滑走運動の組み合わせである咀嚼運動は、現在の下顎位の良し悪しの判断材料にはOJ Award受賞図1-a〜c 下顎偏位の分類。水平面での偏位(a)、前頭面での偏位(b)、複合型の偏位(c)。水平面での偏位前頭面での偏位水平面 前頭面 複合型の偏位abc124

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