ジャパニーズ エステティック デンティストリー2019
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Selection of zirconia ceramics of different characteristics in consideration of individual abutment tooth conditions 2005年に国内で初めて認可され、臨床応用が始まったジルコニアセラミックス(ジルコニア)は、シリカを主成分としたセラミックスと比較し、曲げ強さ、破壊靭性ともに極めて優れているため、これまでメタルフリーでは補綴が困難であった症例(臼歯部のブリッジ、大臼歯部の連結冠、ロングスパンのブリッジ等)においても、オールセラミック修復が可能となった1、2。しかしながら、ジルコニアはCAD/CAMによりクラウンあるいはコーピングを製作する必要があり、当初のCAD/CAMは精度に乏しかったために臨床応用を踏みとどまる歯科医師・歯科技工士も多かった。また、歯科で最初に応用されたジルコニア(第一世代ジルコニア:3mol%のY2O3で安定化し、アルミナが0.25wt%添加されたPSZ)は高強度ではあったが、透光性が不十分で真っ白な色調のため、クラウンやブリッジのフレームワークとしての使用が主な用途であり、自然感のある色調を再現するために多くの歯質削除が必要であった。さらに、その不透明な白色フレームが歯頚部に露出することで審美障害を引き起こすことも問題視されていた。そのため、第一世代ジルコニアを審美領域でのオールセラミック修復物のフレームとして使用するには、①クラウンのマージンを歯肉縁下に設定する、②歯肉頂縁または縁上マージンの場合にはフレームをカットバックしてポーセレンマージンとする、③「不透明な白さ」を解消する十分な歯質削除(唇側のクリアランス)、等の対応が必要であった。 上述のように第一世代ジルコニアはその不十分な透光性により限られた症例に対して使用されることが多かったが、その後光散乱因子であるアルミナ含有量を0.25wt%から0.05wt%に減らし、透光性を改良して上市された高透光性ジルコニアの登場により適応症例は拡大し(Fig 1 to 3)、広く臨床応用されるようになった。高透光性ジルコニア(第二世代ジルコニア:TZP)は、第一世代ジルコニアで問題になっていた不透明な白さが解消されたことで、マージン部のフレーム露出による審美障害は緩和された。また、天然歯に近似した色調のフレームは、少ない歯質削除量でも自然な色調再現が容易になった。このため、これまで臨床応用が難しかった審美的要求度の高い前歯部の少数歯症例あるいは、十分なクリアランスが確保できないような生活歯の修復にも応用できるようになった。また、第二世代ジルコニアはフレームとしての使用だけでなく、厳密な色調再現が不必要で審美的要求度が低い症例(主に小臼歯や大臼歯部)においてはフルジルコニアクラウンとしても応用可能となった。その後、イットリウム含有量を増やすことでさらに透光性を高めたジルコニアも登場した3。現在では、フルジルコニアでも天然歯のようなグラデーションを有する、高透光性マルチレイヤードタイプのジルコニア(第三世代ジルコニア)が開発され、幅広い症例でジルコニアセラミックスが使用可能となった(そのほか、TZPとPSZの積層型ジルコニアも市販されるようになったが、本稿では第一、第二、第三世代ジルコニアと大別する)。しかしながら、透光性の向上によってジルコニアの強度が犠牲となり、第一世代ジルコニアでは1,200MPaを超える曲げ強さを有したが、第二、第三世代ジルコニアでは700~800MPa前後の曲げ強さとなっているジルコニアが多いため、症例ごとに必要な強度を考慮したジルコニアの選択が重要である(クラウンなのか、ブリッジなのか、連結冠なのか、前歯なのか、臼歯なのか、インプラントなのか、etc.)。 また、強度の面だけでなく審美的な側面からは、特に前歯部審美修復においては個々の支台歯の状態や補綴物の設計ごとに、強度・透光性を考慮してジルコニアを選択する必要がある。 本稿では、前歯部のさまざまな状態の支台歯に対して、自然感のある補綴治療を達成するために行っているジルコニアの選択について報告する。※ジルコニアの世代は細かく分類すると10種類以上となるため、本稿では第一、二、三と便宜的に3つに大別して解説する。はじめに:第一世代ジルコニアから第二世代、第三世代へ49THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 2019

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